バークリー音楽大学の電子音楽制作講座をcourseraで受講しましたので感想をかきます!
The Technology of Music Production | Coursera
初心者チュートリアル動画をみても何もわからずに挫折して基礎を体系的に学びたくなった
今回, この講座を受講した動機はトランスミュージックがつくりたいから.
ここ数年ずっとトランスミュージックという音楽ジャンルが好きでよくきいていたのだが, 今年の新年(正確には去年の誕生日)の目標としてトランスミュージックをつくる!という目標を立てた. Bitwig StudioというDAWを購入してさっそく学び始めたのだが, DAWを開いてもなにもわからない!さらにチュートリアルをみてもなにをやっているのかさっぱりわからない!もっというとBitwig Studioをつかったチュートリアルが圧倒的に少ない!!
数ヶ月チュートリアルをやっては挫折してを繰り返すチュートリアル難民を繰り返した後, そもそも基礎を体系的に学んだほうが良いのではないか?と思い, courseraの講座を受けてみた. そう思う前は, まずは実践を通じてなにかを作りながら学んだほうが効率が良いのでは?とおもったが, それに挫折してからの講座受講である.
「The Technology Of Music Production」内容紹介
The Technology Of Music Production、日本語だと音楽制作の技術. この講座はバークリー音大のオンライン講座. 音大というとクラシック音楽の印象が強いが, バークリー音大はクラシック音楽以外で有名らしい.
この講座の魅力は基礎が体系的に列挙されているところ. チュートリアルでトライアンドエラーでつまみながらナニモワカラナくて闇落ちしたわたしには進むべき光が示されたような印象だ.
ただ, 扱っている内容は楽曲制作の手前の部分であり, 音楽すらつくらない. 音響工学だ. そのためエレクトロニックミュージック制作というよりは, 音楽制作にパソコンを用いるための各種音楽制作の知識が学べる.
- 音響の基礎/物理機材
- DAW
- 録音技術
- ミキシング
- マスタリング
- オーディオエフェクト
- シンセサイザー
DAWは機能としての説明で特定のDAWではない
DAWのモジュールはまるまるひとつあるが, これは特定のDAWを扱うのではなく, それを抽象した機能としての説明だった. これが良いのか悪いのかわからないがBitwig Studioはマイナーだから, チュートリアル動画に取り組むにしても, ほかの有名DAWで解説しているものを自分の知識で変換しないといけないから, わたしにとってはよかった.
「The Technology Of Music Production」感想
オーディオエフェクトを網羅的に学べた
実は3ヶ月前にはじめのモジュールだけ取り組んですぐやめてしまった. トランスミュージックが作りたいのに, 一番初めのトピックがケーブルとかマイクとか, 各種機材云々のはなしで, DAWを使った音楽づくりとは程遠い気がしたので. ただ, それでも再び戻ってきたのは, 後半部分のオーディオエフェクトが2モジュールに渡って概論が体系的に説明されていたので.
チュートリアルを進めているといろんなエフェクトをかけていく作業が入るのだが, 次から次へと紹介されると頭が混乱してしまった. ひとつひとつの効果を音を聴き比べながら, これが何の効果を狙ったものなのかを抑えたくなった.
この講座も一つ一つを細かくというわけではないが, 概要をざっと網羅的に眺められたところは狙い通りの学習だった. もしかしたらちゃんと書籍を探せば良い本はあったのかもしれない.
Bitwig Studioはモジュラーシンセだねの意味を理解できた
Bitwig Studioはモジュラーシンセみたいだねとよく見かけるのだが, なんのことだかさっぱりわからなかった. 最後のモジュールでは, シンセサイザーの機能ごとに説明される.
- VCO
- VFO
- VCA
- LFO
- EG
なるほど, こういう機能を組み合わせると音ができる. Bitwig StudioでグラフィッカルなGUIで表現される世界はこういうことかと思った.
電子音楽制作の背景にある電子工学的な側面が好きだ
トランスミュージックがつくりたいという単純な動機が出発点だったものの, どう作るかを微に入り細に穿ち勉強していくと, どうエフェクトがとても重要視されている気がした. そしてエフェクトとはデジタル信号処理であり, これはかなり理系っぽい領域だ.
デジタル信号処理とは電子工学に属する分野のようだ. わたしは大学入学のときに理学の情報にするか工学の電子工学にするかの2択で, 理学を選択した. ただ一方で, 数学を学んでいたときは抽象的すぎるし工学部にしておけばよかったなとけっこう強く思った. とくにわたしが専攻したのは情報理論なのに工学的なことはほぼしなくてひたすら書籍を読んで理学的に数式をみているだけだった. 工学を選んでいたら理学に未練が残ったかも知れないので選択が間違っていたとは思わないけど.
そのため, 今になってエレクトロニックミュージックという斜め上のほうから再び音に対する電子工学的な話題にふれることは面白い. あまり深堀はしないようにしたいけど. 結局信号処理はソフトウェアのライブラリをつかってブラックボックスにして使ったほうがいい. 数式から理解していく時間はおっさんの残された人生にはない.
学生のときは完全にクラシック音楽にハマっていた結果, 他の音楽ジャンルを見下していたことは本当に反省している. 今でも強い偏見があるが, 根暗オタクひきこもりの自分はネアカリア充パリピとは全く別の世界に住んでいると思っていて, ただその偏見のせいでエレクトロニック・ミュージックにほぼ20代はアクセスする機会を失っていた. 機会損失が悲しいことだ.
DAWの複雑さの魅力はソフトウェア開発におけるIDEのようなワクワク感がある
せっかくBitwig Studioを買ったのにはじめはDAWを開くとけっこうつらかった. それは立ち上げると知らない用語や機能がたくさんあり, そもそも操作方法が全くわからず, 途方にくれてアプリを閉じることが続いたからだ. ただ, これもしばらくつかっていて使い方がわかるとだんだん楽しくなってきた. 朝の時間をDAWの充てているが, 初心者挫折 and 勉強習慣化の壁を乗り越えた感がある. 継続的に早起きして時間を投じることができるようになってきた.
Bitwig Studioをつかって音楽を作ると楽しい. これはもはやEclipseをつかってJava開発をするのと変わらないのでは?と思う.
ソフトウェアエンジニアはIDEをつかってプログラムをソースコードに書く. ソースコードはランタイムでその場でコンパイルして実行もできるし、コンパイラーで静的コンパイルすればライブラリとなる.
サウンドクリエイターはDAWをつかって音楽をトラックに書く. 書かれた音はシーケンサーによって動的再生するともできるし, MIDIとしてコンパイルすればDAW以外でも移植できる. MIDIとはVSTとはライブラリだ.
デバッグを繰り返すことでソフトウェアを改善していくように, 単体テスト、結合テスト、システムテストを通じて音楽を洗練させていく. 音楽制作とソフトウェア製作は近いものを感じる.
次は「Creating Sounds for Electronic Music」か
「The Technology Of Music Production」はいろんな音楽制作コースの入口にあたる講座で, 他にも音楽制作に関わるコースがいろいろある. 電子音楽制作に関わるのだと以下の3つ.
Ableton Liveのコースも体系的に知識をインプットするためのよいコースと評判だ. ただわたしはAbletonではない. 次は「Creating Sounds for Electronic Music」を受けてみようと検討している. これはプロジェクトベースで電子音楽制作をしてていく講座で, 最終的にはZeddのような曲ができるらしい.
- Creating Sounds for Electronic Music | Coursera
- Introduction to Ableton Live | Coursera
- Electronic Music Performance Techniques | Coursera