前回の続きです。
禅定波羅蜜レポートをGitHub Actionsで自動生成してみた | Futurismo
いつものように瞑想して脳波データを確認していたら、スペクトログラムに見慣れない帯域が光っていた。「接触不良かな?」と思いつつ調べてみたら、思わぬ発見があったので記録しておく。
謎の10-15Hz帯域が現れた
ある日の瞑想セッション(2025-12-04)のスペクトログラムを見ていたら、いつもは目立たない10-15Hz帯域がセッション全体を通じてずっと光っていた。
通常の瞑想では8-10Hz(Alpha帯域)が明るくなるのが典型的なパターン。でも今回は、それに加えて12-15Hzあたりも同時に活性化していた。
最初は「ヘッドバンドの接触が悪いのかな」と思った。でも接続品質(HSI)を確認したら全チャネル100%。接触不良ではなさそうだ。
じゃあこれは一体なんなのか。AIに聞いてみた(もちろん)。
SMR(感覚運動リズム)という脳波だった
調査の結果、この12-15Hz帯域の活動は SMR(Sensorimotor Rhythm) という脳波リズムであることがわかった。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| :—– | :—– |
| 周波数帯域 | 12-15 Hz |
| 発生部位 | 感覚運動野(中心溝付近) |
| 増加する条件 | 身体を静止させている時、運動を抑制している時 |
| 関連する状態 | 集中、落ち着き、運動抑制 |
なるほど、身体を動かさないようにしていたからか
考えてみれば、その日の瞑想は「動かないでいよう」と意識的に頑張っていた。姿勢を保つことに集中していた感覚がある。
SMRは「動かない」ことで増加するリズムらしい。リラックスして力を抜いているというより、むしろ「動きを抑制している」状態。
TP系とAF系で違うピークが出ていた
さらに詳しく分析すると、センサーの位置によって違う周波数が優位だった。
| 領域 | 主要ピーク | 解釈 |
|---|---|---|
| :—– | :———– | :—– |
| TP系(側頭部) | 8.5 Hz | 典型的なAlpha |
| AF系(前頭部) | 12.5 Hz | SMR / 高Alpha |
つまり、後頭部付近では普通の瞑想Alpha(8.5Hz)が出ていて、前頭部ではSMR(12.5Hz)が出ていた。両方がスペクトログラムに表示されて、10-15Hz帯域全体が明るく見えていたというわけだ。
二峰性ピークの発見
時系列で見ると、常に2つのピークが検出されていた。
セッションの序盤は高周波(12-14Hz)が優位で、後半になると低周波(8.5Hz)が優位になる傾向があった。これは瞑想が深まるにつれてSMRからAlphaへ移行したということかもしれない。
ハーモニクスかと思ったら…騙されるところだった
SMRの調査をしているうちに、もう一つ気になる現象を発見した。PSDを見ると、16Hz, 20Hz, 24Hz, 28Hz, 32Hzという 4Hzの倍数 にピークが並んでいる。
最初の仮説:脳波のハーモニクス
「これは脳波のハーモニクス(高調波)では?」と考えた。
ハーモニクスとは、基本周波数の整数倍に現れる周波数成分のこと。脳波は完全な正弦波ではないので、ニューロンの発火パターンによって倍音が発生するらしい。
基本周波数 f₀ = 4 Hz の場合:
4倍音: 16 Hz = 4 × f₀
5倍音: 20 Hz = 5 × f₀
6倍音: 24 Hz = 6 × f₀
7倍音: 28 Hz = 7 × f₀
8倍音: 32 Hz = 8 × f₀
AIに分析を依頼したところ、「基本周波数4.0Hzのハーモニクスと一致度が高い」という結果が出た。「なるほど、これが脳波の高調波か!」と一瞬納得しかけた。最近のAIはお世辞をいうので、これこそハーモニクスです!みたいなことまで言い出した。
さらに興奮:シューマン共振との一致!?
そしてここで、ある本のことを思い出した。志賀一雅博士の「奇跡の《地球共鳴波動7.8Hz》のすべて」1だ。
この本によると、地球には シューマン共振 という固有の電磁波共振があり、その基本周波数は 7.83Hz 。そして超能力者や気功師が能力を発揮しているときの脳波も7.8Hz付近を示すという。脳波と地球が共鳴することで、超能力が発現するのでは?という仮説だ。
今回のデータを見ると、基本周波数4Hzの2倍音は 8Hz 。これは7.83Hzにかなり近いぞ.
「もしかして…私の脳波が地球と共鳴している?超能力覚醒の兆し?」
…と、一瞬本気で興奮した。そして今から、チを揺るがす?!2
待てよ、検証してみよう
しかし、何か引っかかる。本当にこれは脳活動なのか?
そこで追加検証を行った。Museヘッドバンドを 机に置いた状態 でデータを取得し、 装着時 と比較してみた。
| 周波数 (Hz) | 装着時 (dB) | 机置き (dB) | 差分 (dB) |
|---|---|---|---|
| :———— | :———— | :———— | :———- |
| 16 | -1.2 | 20.9 | -22.1 |
| 20 | -2.8 | 18.5 | -21.3 |
| 24 | -4.2 | 18.0 | -22.3 |
| 28 | -5.3 | 19.0 | -24.3 |
| 32 | -5.4 | 17.8 | -23.1 |
机に置いた方が100倍以上強い!?
結果を見て驚いた。 机置き状態の方がパワーが20dB以上高い (約100倍以上)。
これは完全に予想外だった。もし脳波のハーモニクスなら、頭に装着していない状態でこんなに強く出るはずがない。
正体は環境由来の電磁干渉だった
追加分析の結果、これらのピークは 環境由来のアーチファクト(電磁干渉) であることが判明した。
なぜ机置きで強くなるのか:
- 電極が皮膚に接触していない状態では、電極がアンテナのように動作
- 環境中の電磁ノイズを拾いやすくなる
- 装着時は皮膚との接触がシールドとして機能し、ノイズが抑制される
考えられるノイズ源:
- Bluetooth通信ノイズ
- デバイス内部のクロック回路
- 電源回路からの漏れ
- 環境中の電磁波
危うく騙されるところだった
「4Hzの倍数にきれいに並んでいる」「ハーモニクスの理論と一致する」という事実だけを見て、「これは脳活動だ」と結論づけるところだった。
教訓:
- きれいすぎるパターンは疑え - 脳波は生体信号なので、こんなに綺麗な等間隔にはならない
- 対照実験が大事 - 机置きとの比較という単純な検証で真相がわかった
- AIの分析も鵜呑みにしない - AIは与えられたデータから最もらしい解釈を出すが、それが正しいとは限らない
とくに恐ろしいのはAIが、さもハーニモクスをもっともらしく解説しはじめたところだ. 自分で批判的に追加検証するまでわからなかった. お世辞がうますぎる、超能力覚醒かも?じゃねえよ. 3
今回はMPが足りないだけだよ
残念ながら、奇跡の超能力覚醒ではなかったことが無念でしかたがない.
だが、今回は違いそうだというだけの話だ. またなにか見つかるかも知れない. そもそもわたしが波動を出せるレベルでなかっただけかもしれない.
MPが足りない. 魔法使い目指して、メラの練習からはじめよう.
まとめ
脳波データの「異常」を調査したら、SMRという本物の脳波と、電磁干渉という偽物のノイズ、両方を発見したという話。
今回学んだこと:
- SMR(12-15Hz) は「動かない」ときに増える脳波 → これは本物
- 4Hzの倍数ピーク は環境由来のアーチファクト → これは偽物
- 前頭部と側頭部で違う周波数が優位になることがある
- 「きれいすぎるパターン」は疑った方がいい
- 対照実験(机置き比較)で簡単に真偽がわかることもある