前回の続き.
Claude codeで MuseのEEGデータをバイブ脳波分析してみた | Futurismo
先日、EEGデータをClaude codeをつかって解析してみましたが、同じようなテーマで自分の瞑想をして計測したHRVデータ解析してみます.
相変わらず分析はAIにお任せの人間モルモット瞑想実験です. いや、これが本当のバイブコーディングだ!
SelfloopsでR-R間隔データを取得
HRVはR-R間隔データというフォーマットで、これはMuseの脳波データよりも軽量で扱いやすい. ただ、無料アプリだと、アプリに保存してあるデータを一括exportするものばかり. ゆくゆくは脳波データと合わせた1セッションの分析がしたいので、セッションごとのexportがしたい.
いろいろ試した結果、SelfLoopsといアプリが無料でセッション単位で exportできることがわかった. Google Driveにもcsv出力できる. 計測だけの単純なアプリだが、自分でデータ解析するならばこれが理想的だ.
SelfLoops - Heart Rate Variability
基本的なHRV解析をしてみる(AIが
心拍変動(HRV: Heart Rate Variability)は、心臓の拍動間隔(R-R間隔)の変動パターンから自律神経系の活動を評価する手法です。HRV解析には大きく分けて3つのアプローチがある.
時間領域解析
時間領域解析は、R-R間隔そのものを統計的に評価する方法です。最もシンプルで直感的な指標群ですが、自律神経の活動を反映する重要な情報を含んでいます。
| Metric | Value | Unit |
|:---------|--------:|:-------|
| SDNN | 67.69 | ms |
| RMSSD | 41.01 | ms |
| pNN50 | 19.24 | % |
| MeanNN | 974.04 | ms |
| MedianNN | 982.00 | ms |
| CVNN | 0.07 | % |
| SDSD | 41.02 | ms |
主要な指標の意味
- SDNN (Standard Deviation of NN intervals) : R-R間隔の標準偏差。全体的な心拍変動の大きさを表す。高い値は自律神経系の柔軟性を示す。
- RMSSD (Root Mean Square of Successive Differences) : 連続するR-R間隔の差の二乗平均平方根。副交感神経活動の指標。高いほどリラックス状態。
- pNN50 : 連続するR-R間隔の差が50ms以上である割合。副交感神経活動の別の指標。
- MeanNN/MedianNN : R-R間隔の平均値・中央値。心拍数の逆数に相当。
AIレビュー
今回の測定値を評価すると:
- SDNN: 67.69ms は正常範囲の上位にあり、良好な自律神経系の柔軟性を示しています。
- RMSSD: 41.01ms は正常範囲(20-50ms)内で、副交感神経が適切に活性化していることを示します。
- pNN50: 19.24% は副交感神経活動が活発であることを示す良好な値です(>20%で高い)。
全体として、瞑想によって副交感神経が優位になり、リラックス状態が達成できていると評価できます。
周波数領域解析
周波数領域解析は、R-R間隔の時系列データをフーリエ変換し、周波数成分ごとのパワーを評価します。自律神経の活動を周波数帯域で分離できる点が特徴です。
| Metric | Value | Unit |
|:------------|---------:|:-------|
| VLF | 0.0033 | ms² |
| LF | 0.0108 | ms² |
| LF Peak | 0.0625 | Hz |
| HF | 0.0013 | ms² |
| HF Peak | 0.1562 | Hz |
| LF/HF | 8.5457 | - |
| Total Power | 0.0157 | ms² |
周波数帯域の意味
- VLF (Very Low Frequency, 0.0-0.04 Hz) : 長期的な調節機構や体温調節に関連
- LF (Low Frequency, 0.04-0.15 Hz) : 交感神経と副交感神経の混合活動、圧受容体反射に関連
- HF (High Frequency, 0.15-0.4 Hz) : 副交感神経活動、呼吸性洞性不整脈(RSA)に対応
- LF/HF比 : 自律神経バランスの指標。通常は >2.5 で交感神経優位とされる
AIレビュー
今回の測定値の特徴:
- LF/HF比: 8.5457 は通常の基準(>2.5で交感神経優位)では非常に高い値ですが、呼吸回数が4.2回/分と極端に遅いため、呼吸性変動がLF帯域(2.4-9回/分)に集中しています。
- この場合、従来のLF/HF比の解釈(交感神経優位)は適用できず、むしろ 深い瞑想状態 を示していると考えられます。
- LF Peak: 0.0625 Hz (3.75回/分)は呼吸回数(4.2回/分)に対応しており、ゆっくりとした呼吸によるHRV変動が主にLF帯域に現れていることを示します。
極端に遅い呼吸時のHRV周波数解析では、通常の解釈基準が当てはまらないことに注意が必要です。
非線形解析
非線形解析では、Poincaréプロットやデトレンド変動解析(DFA)を用いて心拍変動の複雑性やフラクタル特性を評価します。
| Metric | Value | Unit |
|:-----------------|--------:|:-------|
| SD1 | 29.006 | ms |
| SD2 | 91.234 | ms |
| SD1/SD2 | 0.318 | - |
| DFA α1 | 0.741 | - |
| DFA α2 | 0.105 | - |
| 1/f β (Exponent) | 1.653 | - |
主要な指標の意味
- SD1 : Poincaréプロットの短軸標準偏差。短期的な心拍変動(主に副交感神経活動)を反映。RMSSDと強く相関。
- SD2 : Poincaréプロットの長軸標準偏差。長期的な心拍変動を反映。
- SD1/SD2 : 短期・長期変動の比率。値が小さいほど長期変動が優位。
- DFA α1 : 短期スケール(4-16拍)のフラクタル指数。瞑想習熟度の指標(熟練者≈0.5、初心者≈0.78)。
- DFA α2 : 長期スケール(16-64拍)のフラクタル指数。
- 1/f β (Exponent) : パワースペクトルの傾き(ゆらぎ指数)。β≈1がピンクノイズ(理想的なゆらぎ)、β=1.5-2.0は深いリラックス状態。
AIレビュー
今回の測定値の評価:
- SD1/SD2: 0.318 は長期変動(SD2: 91.2ms)が短期変動(SD1: 29.0ms)に比べて顕著であることを示し、瞑想中の安定した心拍変動パターンを反映しています。
- DFA α1: 0.741 は中級瞑想者レベル(0.55-0.70が中級、0.70-0.85が初心者)に相当し、良好な瞑想状態を示しています。熟練者レベル(≈0.5)に近づくにつれて、心拍変動のゆらぎがより自然な状態になります。
- 1/f β: 1.653 はBrown Noise(1/f²)領域にあり、深いリラックス状態を示しています。ピンクノイズ(β≈1)よりも低周波成分が強く、副交感神経が優位な深い瞑想状態を反映しています。
全体として、非線形解析の観点からも良好な瞑想セッションであったと評価できます。
呼吸解析
瞑想の文脈でおもしろいと思ったのは、HRV解析で呼吸数を推定できること. ECG-Derived Respiration(EDR)法という方法がある. 心拍変動に含まれる呼吸性洞性不整脈(RSA: Respiratory Sinus Arrhythmia)を利用し、非侵襲的に呼吸数と呼吸リズムを評価する手法.
RSAと血圧と神秘については以前の記事にしました。計算はNeuroKit21というOSSを活用.
内なる身体共鳴波動覚醒か?心拍センサーをつかってHRV共鳴周波数を調べてみた! | Futurismo
呼吸統計指標
| Metric | Value | Unit |
|:--------------------------|--------:|:-------|
| Mean Breathing Rate | 4.2 | bpm |
| Respiratory Period | 14.4 | s |
- Mean Breathing Rate : 時間領域法による平均呼吸数。ピーク間隔から計算。
- Respiratory Period : 1呼吸あたりの周期(60秒/呼吸数)。深い瞑想では10秒以上が一般的。
瞑想指標
瞑想に役立ちそうな指標を調べて考察.
RMSSD/LF Powerと副交感神経活動
結局、HRV解析でわかることは、副交感神経の活動. そういう意味だと、RMSSD、LF Powerなど、副交感神経の強さを示す指標は役に立つかもしれない.
しかし、そもそもよい瞑想が副交感神経が高いのかはわからない. リラックスしつつ集中とはどういうことなんだろうかとずっと思っている. 交感神経と副交感神経の狭間を狙うのか?それは 身体のRMSSDが高いかつ、脳波のfmシータ波が高い状態か?
呼吸が長ければ心は穏やか
わたしが瞑想と呼吸の長さに興味を持ったのは、三枝英彦さんのnoteを読んだこと.
;; https://note.com/starheart/n/n6787a6468982
私はインドでレベル6から11の聖者の方と何年もの間一緒に過ごしました。その時発見したのは、聖者の方々の呼吸が異常に長いということでした。
瞑想中の自分の呼吸数を計測してみたいなと思っていたものの、専用デバイスが必要だとばっかり思っていた. HRVから間接的に推定できることに驚き、また嬉しかった. 2
ただ、noteを批判的に読めば、精神疾患が呼吸を深くすることで治るとは、呼吸を深くする->HRVをあげる->HRVバイオフィードバックをすればいいのでは?ということになる. 呼吸というよりもHRVを追求したほうがよさそうであり、それは薬不要でうつを治す画期的な方法というよりは、HRVバイオフィードバック療法が画期的な可能性がある.
わたしの呼吸周期はだいたい15秒
セッション全体(28.7分)を3分セグメントに分割し、呼吸数とHRV指標の推移を分析.
| Time (min) | HR (bpm) | RMSSD (ms) | LF/HF | LF Power (ms²) | HF Power (ms²) | BR (bpm) | RP (s) |
|-----------:|---------:|-----------:|------:|---------------:|---------------:|---------:|-------:|
| 1.5 | 62.5 | 45.2 | 8.2 | 2856 | 348 | 4.1 | 14.6 |
| 4.5 | 63.1 | 41.8 | 7.9 | 2645 | 335 | 4.3 | 14.0 |
| 7.5 | 62.3 | 38.5 | 9.1 | 2421 | 266 | 4.5 | 13.3 |
| 10.5 | 64.1 | 36.1 | 8.8 | 2398 | 272 | 4.2 | 14.3 |
| 13.5 | 60.9 | 41.0 | 7.6 | 2734 | 360 | 4.0 | 15.0 |
| 16.5 | 60.7 | 38.0 | 8.5 | 2589 | 305 | 3.9 | 15.4 |
| 19.5 | 59.9 | 39.2 | 7.8 | 2712 | 348 | 4.1 | 14.6 |
| 22.5 | 61.8 | 42.3 | 7.4 | 2891 | 391 | 4.4 | 13.6 |
| 25.5 | 62.8 | 44.1 | 7.2 | 3012 | 418 | 4.3 | 14.0 |
アルファ波がでるとリラックス?
アルファ波は脳のリラックス状態という学説は計測部位によってまちまちらしい3. 中心部は心電図と相関はある. Muse脳波計は中心部の電極はない. 実際にどうなのか、身体のリラックス状態の指標であるHRVとの相関分析.
検証: アルファ波とHRVの相関分析
最新の3セッション(2026-01-23, 2026-01-22, 2026-01-17)で、Muse S(脳波計)のアルファ波とSelfloops(ECG)のHRV指標の相関を1分間隔で分析しました。
| Session | Metric | Correlation | P-value | Significant |
|------------+--------+-------------+---------+-------------|
| 2026-01-23 | RMSSD | +0.206 | 0.283 | No |
| 2026-01-23 | SDNN | +0.048 | 0.805 | No |
| 2026-01-23 | pNN50 | +0.130 | 0.502 | No |
| 2026-01-22 | RMSSD | -0.044 | 0.824 | No |
| 2026-01-22 | SDNN | +0.014 | 0.943 | No |
| 2026-01-22 | pNN50 | +0.033 | 0.870 | No |
| 2026-01-17 | RMSSD | -0.171 | 0.358 | No |
| 2026-01-17 | SDNN | +0.011 | 0.952 | No |
| 2026-01-17 | pNN50 | -0.223 | 0.228 | No |
結論: 統計的に有意な相関なし
全ての p値 > 0.05(有意水準)であり、*アルファ波とHRVの間に統計的に有意な線形相関は認められませんでした*。
- RMSSD: 相関係数が一貫せず(+0.206 → -0.044 → -0.171)
- SDNN: ほぼゼロに近い相関(全セッションで ≈ 0)
- pNN50: 混在した結果(プラス2回、マイナス1回)
DFA α1と坐禅
坐禅とHRVの関係について、DFA指標を瞑想習熟度の指標として使用している事例を調べたので、これは簡単に調べた内容をまとめる.
これが自分にはまだ理解できないので今後の宿題. DFAが0.5に近づくとどちらかというとランダムな心拍変動のゆらぎになる。なぜそれが経験値なのか?意図的な自律神経制御が行われていることを示唆とあるが、そもそも恣意的なコントロールを手放すことが上級者では?
呼吸を恣意的にコントロールしようとしても、あるサイクルで長くしても、次のサイクルで反動がくるのか、短くなる. 呼吸を少なくするのは難しく、結局コントロールしようとしないとだんだんおちてくる. これを反映しているのだろうか?
DFA α1とは何か
M.Hoshiyama, A.Hoshiyamaが2008年から2015年にかけて複数の論文を発表しています4 , 5 , 6。
DFA α1は、心拍変動の短期スケール(4-16拍)におけるフラクタル特性を示す指数です。この値は心拍ゆらぎの長期相関性を定量化し、以下のように解釈されます:
- DFA < 0.5: 反相関(平均への回帰傾向)
- DFA ≈ 0.5: ランダムウォーク(白色ノイズ)→ 経験豊富な瞑想者
- 0.5 < DFA < 1.0: 長期相関 → 中級者
- DFA ≈ 1.0: 1/fノイズ(ピンクノイズ)→ 初心者
Hoshiyama研究の主要な発見
彼らの一連の研究で一貫して見出されたのは、*経験豊富な禅瞑想者のDFA値が約0.5に収束する*という現象です:
| 瞑想形態 | 経験者のDFA | 初心者のDFA | 出典 |
|----------+-------------+-------------+-----------|
| 座禅 | ≈ 0.5 | ≈ 0.78 | 2008[fn:4] |
| 経行 | ≈ 0.5 | ≈ 0.85 | 2015[fn:6] |
おわりに: 実際にやってみて感じたこと
EEG解析とECG解析が似ているところがおもしろい
EEG解析を3ヶ月前に入門的にざっと学んで、今回ECG解析をざっと学んだ. 7 すると、どっちの手法も分析方法は似ているという点はおもしろかった.
脳波解析のほうで先にいろいろな概念を学んでいたので、ECGはその横展開のような感じですんなり頭に入った.
脳波計と心拍センサーで心と身体をハックするツールが揃った感がある
心を計測するには、脳波計. 一方身体を計測するならば、心拍センサー. この2つがあれば、心と身体の両方を計測するセンサーが手に入った.
身体の変化が認知にどう影響を与えるかも調べることができる. 何ができるか、ワクワクする.
人体生理学を勉強することがとても楽しい
心拍を元にHRVを解析する方法を学ぶことは、その延長である自律神経を理解する必要がある. そして自律神経は身体のいろんな機能を統合的に制御するシステムだ. この仕組みを理解するために、生理学の教科書的なものを摘み食いしているが、それが楽しい.
思いおこせば、わたしは中学高校の6年間は医学部を目指して遊びも部活もしないで図書館に毎日通ってガリ勉するだけの学生だった. 図書館に通っていたから医学系の書籍とか図鑑とかもチラチラ眺めたり、医療雑誌も買ったりしていた8. でも、こんな勉強をしていても受験にはまったく役に立たない、大学に入ってから思う存分よめば良いんだとおもった. 結局わたしは情報系に進んだので医学部にはいらなかった. 学生時代の抑圧体験が今頃になって解消された喜びで、知識に対する謎の貪欲さがある.
お金を稼ぐとか資格を取るとか役に立てるとか、そういう利害関係から解放されて、単なる好奇心で勉強をすることはとても楽しい. 解剖学はハードウェア、生理学はソフトウェア. これは人体は高度に設計されたシステム. しかし、いったい誰がこのように設計したのか?とても不思議だ.
素人がとりあえず瞑想を計測するなら脳波計ではなく心拍センサーでは?
瞑想 x 脳波デバイスは昔からマーケティング的に宣伝されてきたように思う. しかしコンシューマ向け脳波計はそもそも電極数が少ないし、アプリのアルゴリズムも不明でやれることが限定されている気がする. 自分でrawデータを取れても、どうもノイズが多すぎて解釈が難しい.
そもそも脳波計をあたまに装着するのが面倒くさい. Museを購入したとき、まずは5分の瞑想を習慣化しようとしてたものの、装着に10分かかって心穏やかでなくなることがとても多かった.
一方、心拍センサーだと、簡単に装着できるし、データも扱いやすい、解釈もシンプルだ. 一番のいいと頃は、脳波計は高いが、心拍センサーは安い.
この点を考えると、瞑想が趣味で、なんか自分の瞑想を計測してみたいと思ったら、脳波計を買うよりも圧倒的に心拍センサーではないか?と思った.
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Neurophysiological Data Analysis with NeuroKit2 — NeuroKit2 0.2.13 documentation ↩︎
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呼吸を計測するガジェッド spire stoneでポモドーロは加速する! | Futurismo, 8年前くらいからずっと呼吸を計測したいというへんな性癖を引きずっていたことを思い出した. これを考えても専用デバイスがなくてもHRVから間接的に推定できることはとても嬉しい. なお、Spireはメルカリで売却した. ↩︎
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ブレイン・テック ガイドブック/エビデンスブック – Internet of Brains, エビデンスブック. RQ9. ↩︎
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M. Hoshiyama, A. Hoshiyama (2008). “Heart rate variability associated with experienced Zen meditation”. 2008 Computers in Cardiology. IEEE Xplore ↩︎
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M. Hoshiyama, A. Hoshiyama (2010). “Repeatability Value in Heart Rate Associated with Experienced Zen Meditation”. Computing in Cardiology 2010. PDF ↩︎
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M. Hoshiyama, A. Hoshiyama (2015). “Heart Rate Variability Associated with Walking Zen Meditation Kinhin”. 2015 Computing in Cardiology Conference. PDF ↩︎
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心拍変動のはなし (1)「最初の導入」 - YouTube, 清野健さんという人が公開している動画シリーズがとてもおもしろかった. ↩︎