はじめに: ヒゲキャッチBotについて整理してみた

仮想通貨Botのヒゲキャッチ戦略について, ネットで調べてもどうも用語が錯綜しているように思いますので, 自分の思考の整理も兼ねて知識をアウトプットしてみることにします.

違和感としては, どうもそれぞれの記事の文脈によって, それぞれの戦略が異なるように思え, それをヒゲキャッチBotという言葉でまとめられているように思います. ここをうまく言語化して消化したいというのがこの記事を書くモチベ.

ヒゲとはなにか?

ヒゲキャッチ, 別名, ひげ取りbot, 鬚取りbot. そもそも, ヒゲとはなにか?

Wikipediaによると, ローソク足の陽線と陰線を 俗にヒゲという1. 英語では, Upper Shadow, Lower Shadow. チャート上で, 上や下に伸びる線で示されるもの. このへんは基礎なのでいろいろとネットに解説記事はおおい.

ヒゲはなぜできるか?

それでは, ヒゲはなぜできるか?

通説も含め, 3つに分類してみる. そしてこの3つはのちのちの3つの戦略の分類にも関連する.

ヒゲは大口注文で発生する

大きなサイズの成行注文によって, 最良価格周辺の板が食われることが原因.

大口成行注文(大きなサイズ)が入ることによって, 最良価格付近の指値注文が全て約定されることによって最高値(最安値)に一瞬なり, その後, 大抵は急反発によって元の価格に戻る.

なお, 大口注文をする側の人はする側で, ヒゲが発生しないような工夫2をしているので, それでもヒゲになってしまうのは, 早急にトレードしたい場合か誤発注か初心者.

ヒゲは板が薄いと発生する

板の厚さをデプスという. 最良価格から数えた板に並んでいる注文サイズの合計.

このデプスが小さい, 誰も指値注文を出してない, いわゆる板がスカスカな状態と言われる. 流動性という言葉を, 大きなコストを払わずに交換しやすいという意味で使うならば, 流動性が低いといえる. この板がスカスカな状態で成行注文をいれると, いわゆる板が食われる状態になり, チャートではヒゲにみえる.

このとき成行注文は不利な価格で約定するので, 普通ならばここで注文しないのだが, それでも「今売りたい!」という人が, 成行注文で取引をするとこうなってしまう. このような不利な価格で取引をするコストは, マーケットインパクトコストという.

もしくは初心者がUIからポチっとするとこうなる. ミスプライスともいう.

ヒゲはロスカット/ツッコミトレードで発生する

国内取引所ではレバレッジ規制のためあまりないが, 海外だと高いレバレッジでトレードができるため, ロスカットがよく起こる. これは, たとえば価格が暴落しているときにハイレバレッジでロングポジションを持ち続けていると, ある価格で強制的にシステムが決済ショートを執行してしまう. そうすると, ただでさえ暴落している局面での強制的なロスカットで価格が下がりすぎになる(オーバーシュート).

または, 暴騰暴落している局面で, イナゴのように飛び乗ってツッコミ売買をすると, そのイナゴたちの注文も価格を大きく動かす.

下がりすぎた価格はもとに戻る(リバージョン). すると, これはチャートの時間足でみると, ヒゲのようにみえる. ただし, これは1分足でみてみると, ヒゲではなく, 暴落とそこからの戻りの形跡がみえる.

ヒゲキャッチ戦略3つの型

ヒゲキャッチ, ヒゲキャッチ戦略とはなにか? ヒゲキャッチは俗名なので, より一般的には? ヒゲトレード.

チャート上でヒゲに見える局面で利益を得るトレード戦略の総称. ヒゲは, 大口注文/低い流動性/暴騰暴落などの, いわゆる市場の歪みを取りにいくトレード戦略. そして, このヒゲトレードの自動売買がヒゲキャッチBot.

そして, ヒゲ発生要因を3つに分類したので, これをエッジとするような3つの戦略がそれぞれ考えれられる. それぞれ, 微妙なセンスによって一時的に名前をつけてみる. さらに, その独自定義した名前と, 関連するbotについての比較もしたい.

  • ヒゲマグロ型: いわゆる純粋ヒゲキャッチBot.
  • チョビヒゲ型: mmbotっぽいヒゲキャッチBot.
  • ヒゲイナゴ型: イナゴBotっぽいヒゲキャッチBot.

ヒゲキャッチ壱ノ型: ヒゲマグロ

よくヒゲキャッチBotといわれるのは, だいたいこのヒゲマグロ型3.

誰も取引していないような過疎過疎通貨市場においてうっかり成行注文をしてしまったり, 今売りたい大口トレーダーが市場の状況を構わずに注文してしまうと, 事故がおこったようにしてチャートにぴょーんと縦線が走る. それによって, 事前にオーダーブックに出していた自分の指値注文が約定してから, 速やかに反対方向に決済すると, ヒゲのぶんだけが利益になる.

この場合, 収益源はマーケットインパクトコスト. 大口注文によるヒゲをねらう.

最良価格からの指値を離せば離すほどに大きな利益が得られるが, 約定機会はすくない. これはスイングBotに分類される. そしてポイントは, 指値を出す価格をどのくらい離すかをパラメータ調整することで, それがリスクを調整することにもなる. そして, 指値価格を小さくしたものをチョビヒゲ型と呼んでいる.

ヒゲキャッチ弐ノ型: チョビヒゲ

チョビヒゲ型は裁量価格近くに指値を出して低流動性高ボラティリティな市場に対して板を出すことで流動性を提供する. あれ, これはもしやマーケットメイクではないか? そう, チョビヒゲ型はmmbot4とかなり似ている. というよりほぼ同じ.

そもそもヒゲキャッチをするためにはask/bid板の両サイドに指値注文を入れるようなマーケットメイカーなので, ヒゲキャッチbotはmmbotともいえる. あえて区別するならば,

  • ヒゲキャッチbotはテイカーのマーケットインパクトコストが収益源.
  • mmbotはテイカーのスプレッドコストが収益源.

mmbotはスプレッドが開きすぎているような状況において, 売りと買いの指値が 約定することで, その差額が収益になる.

ただし, 高スプレッド/高ボラティリティと低流動性は似たようなものであり, したがって, ヒゲキャッチの指値を最良価格からあまり離れていないところに指すならば, 両者は同じような動きになる.

指値が刺さったあとも, そのポジションの解消は速やかに最良価格で閉じればヒゲキャッチぽくあり, ポラティリティの大きさからそのまま反対側の指値が刺さるのをそのまま待つならばマーケットメイクっぽい. ただ, クローズ戦略にしてもmmbotとヒゲキャッチbotはかなり似ている.

また, このチョビヒゲ型は, 単一マグロとは違い, 集団イナゴの成行注文によって価格が動くため, 後述のヒゲイナゴ型のチョビイナゴ版ともいえる.

ヒゲキャッチ参ノ型: ヒゲイナゴ

ヒゲイナゴ型, これはいわゆる逆張り型イナゴbotと呼ばれるもの. そしてイナゴBotとはイナゴトレードの自動化であり, 裁量トレードにおける逆張り戦略と親和性が高い.

そして, ネットでいろいろとヒゲキャッチの情報を漁っていると, botの情報よりかは裁量トレードにおけるヒゲキャッチの解説記事がとてもおおく, それはだいたいヒゲイナゴ型と分類できるような, オーバーシュートしている局面における短期リバ取り逆張り戦略. 瞬間的にはヒゲではなくても, 5分足や30分足ならばヒゲに見えることもある. ローソク足の期間の違いでヒゲにみえる値幅を取る.

この類のヒゲはロスカット/ツッコミトレードとその戻りで発生する. このようなポジション損益を収益源とする.

海外取引所の場合, Open IntersetやLiquidationというような, いわゆるデリバティブデータはAPI取得できる5.

ヒゲキャッチBot執行戦略

ヒゲキャッチと注文の出し方について.

ヒゲキャッチオープン戦略

ヒゲをキャッチするなら成行注文ではなく指値注文. ヒゲキャッチは誰かの成行注文を指値注文で待ち構える. ヒゲを検出したあとに成行注文を発注しても遅い.

これは, ヒゲマグロ型とチョビヒゲ型にいえることで, リバージョンを狙うヒゲイナゴは当てはまらないかも.

ヒゲチャッチ後のクローズ戦略

瞬間的な価格変動はすみやかにもとの価格に戻る. ヒゲマグロ型やチョビヒゲ型は基本的には瞬間的にヒゲになってすぐに戻ることを期待してヒゲ前の価格あたりでの即時決済が基本的なクローズ戦略となる.

一方, 長い期間でみればヒゲだが短い期間だとたんなるトレンドであるヒゲイナゴは, ヒゲ分をすべて戻るまで待たなくても, たとえば半値戻しなどある程度の利幅で利確する戦略もある. このへんは工夫のポイント.

いずれにしろ, ポジションを持ち続けることはリスクでしかないので, ヒゲをキャッチしたら速やかに決済したい.

ヒゲ貫通リスクと損切り戦略

ヒゲキャッチ戦略で損をするのは, ヒゲキャッチしたあとに, そのままキャッチした価格よりも不利な価格へと値動きしてしまい, 損切りするケース. いわゆるヒゲ貫通.

これについて, 指値を指す価格幅の調整がひとつの対策. 指値を出す価格のスプレッドは, それがそのままヒゲキャッチBotのリスク形容度となる. ただし, 指値を現在価格から離せば離すほどにヒゲキャッチをする機会はすくなくなる.

ヒゲマグロ型はリスクは低く, しかし収益機会も少ない. それに対して, チョビヒゲ型とヒゲイナゴ型は, 大量のイナゴ注文によって暴騰暴落に飲み込まれてしまうリスクは常に高い.

貫通した場合に備えて, 損切りロジックを組んでおくことはとても重要6.

おわりに: 仮想通貨botの自動売買で稼ぐならばヒゲマグロ

最後に, この記事を書く目的は, 1年前の記事の答えあわせのためだった.

✅仮想通貨botの自動売買でどう稼ぐか(2022/07) | Futurismo

仮想通貨botの自動売買でどう稼ぐか?

高頻度mmbotで小さな成功体験を目指す

ハズれです. 残念でした. イキリやろうめ, あふぉじゃないの? 何も知らない1からbotをつくるとしたらファーストチョイスはヒゲキャッチ. さらにいえばヒゲマグロ型のヒゲキャッチ.

  • ロジックが簡単.
  • 値幅さえ大きくすればリスクは高くない.
  • いつの時代でも初心者やうっかり者の雑な成行注文はおこる.
  • いつの時代でも参加者が少ない過疎過疎ニッチ市場はある.

国内と海外でどっちがいいのかはまだ結論はでていない. というより2023年現在, 海外取引所からの日本人ユーザ締め出しが相次いでけっこう嫌になってる. そして国内に利があるとするならば 海外に比べてしょぼい鎖国市場かもしれない.

(ここにアフィリリンクを貼る).

なおわたしは1年botをいろいろつくって見込みがありそうなのもヒゲキャッチbot. しかし, ヒゲ貫通損切りしそこないロスカット事故をやらかしたので稼げてないので, ヒゲ貫通リスクは最後に強調しておく.

わたしは涙を拭いてこれからマグロ漁船に乗って過疎過疎通貨市場に旅立ちたい. これからもヒゲキャッチに取り組むかはわからないが, 1年の一区切りとしていちおう調べたことのまとめのための備忘録として書いた.

参考リンク

参考にした情報をブックマーク. この記事を書くモチベになったのは, 他の発信情報をとても参考にしたことへの感謝もある. ヒゲキャッチの情報は全体的に少ない気がする. そもそもヒゲについて調べるとメンズ髭剃りの話題ばかり.

ヒゲマグロ型/チョビヒゲ型

LTPからの値幅という意味ではヒゲマグロ型/チョビヒゲ型は同じかもしれない.

ヒゲイナゴ型

ヒゲイナゴ型, というよりリバ取り戦略で参考にした記事.


  1. ローソク足チャート - Wikipedia ↩︎

  2. 最適執行戦略で検索. ↩︎

  3. なお, 一般的に大口トレーダーはクジラとかゾウとかと呼ばれ, マグロとは呼ばれない. マグロ一本釣りの爽快感よりヒゲマグロと個人的に呼んでいる. よゐこ濱口ならばとったどーと叫ぶであろう. ↩︎

  4. mmbotについては過去記事参照. 🖊仮想通貨botで損してみた! - mmbotからマーケットマイクロストラクチャーへ | Futurismo ↩︎

  5. coinalyze や coiniglass のAPIは課金しなくてもそこそこのデータを取得できる. ↩︎

  6. はじめわたしは損切りは手動でやる運用にしていたが, ある日朝起きたら貫通しまくりの上精算でウォレットの証拠金すべて吹き飛んだので後悔した. ↩︎