🖊はじめに: 駆け出しボッターがmmbotで損してみた
仮想通貨botの自動売買でどう稼ぐか(2022/07) | Futurismo
地雷を踏まないように検討した結果mmbotに突っ込んで地雷を踏んだ. mmbotでわたしはまだ稼げてない. この記事はmmbotに挑んだ後日談としての位置づけかも.
✅Stoikovさんのセミナー動画が面白かったので感想を書く
数日前にYoutubeに投稿されたSasha Stoikovさんの動画が面白かったので, これについて感想を書きたいと思った.
Stoikovさんは, トレード自動売買におけるマーケットメイク理論の有名な論文である📄High-frequency trading in a limit order book - Avellaneda and Stoikov [2008](以後, A&Sアルゴリズム)を書いた人だ. 仮想通貨の自動売買ではこのマーケットメイク戦略をつかったプログラムをmmbotという俗語で読んでいる.
✅mmbot Latest Update 2023
mmbotについてわたしもいろいろ調べたのだがどうもそれぞれの使っている用語が微妙に違うように思う. なので, 私がmmbotについて調べた情報を書く. 調べた情報は全て検索で引っかかる情報を参考にした. もしかしたら儲かる方法は有料noteに載っているのかも.
そしてmmbotをつくった感想, 駆け出しボッターの視点のポエムを書く. また, 現在わたしはmmbotとは別の方法を模索しているため, その方向性としてのマーケットマイクロストラクチャーについてのポエムを書く. なお, このあたりのマーケットメイクについてわたしも理解が深いというわけではなく, 書いていることも間違っているかもれない. 駆け出しボッターとポエムという点を強調しておく. どうも最近, ChatGPTの出現によって客観的な情報よりも主観的な価値判断やポエムを, より多く未来の私に残したい気分だ.
なお, マーケットメイクという用語もmmbotという用語もそもそも日本独自の用語で, market making, market maker botと検索しないと海外の情報はでてこないが, この記事ではマーケットメイクで表記は統一したい.
📹マーケットメイクは儲からないからやめたほうがいい、からの改善方法
このStoikovさんの動画はなにかのセミナー動画のような, あまりマーケットメイクについての知識がないところから説明しているというというところで, イラストも含めてとてもわかりやすい.
マーケットメイクの概念から, 課題に対する自分のA&Sアルゴリズムの解説が続く. 今からもう15年も経ったが未だにたくさんの人がみていて, さらに時代を越えて本人が解説動画を投稿するのはなかなかエモい.
クリプトにおけるマーケットメイクについて言及
さらに面白いなと思ったのは, マーケットメイクがもてはやされているのが株取引とHFTの世界で, アカデミックな内容もそっちよりが多いが, StoikovさんがこのA&Sアルゴリズムがクリプト市場でどう機能するのかを分析している.
まず, クリプト市場はtickにしろlotにしろ小さな単位が指定できる点で, マーケットメイクは株よりもメリットが大きいといっていた. 小さな単位であればあるほど, 試行回数は上がることで大数の法則によって計算した期待値により近づいていく(わたしは株は詳しくないので直感的にはわからなかった).
そして, このマーケットメイクをオープンソースにしたHummingbotへの言及がさらに面白い.
Hummingbotはマーケットメイクを民主化する
Hummingbotは高頻度取引戦略を誰でも自由に利用できるようにすることを目的としたコミュニティ主導のオープンソースプロジェクト. Hummingbotは, マーケットメイクを民主化するという理念を掲げている.
マーケットメイクは従来, ウォールストリートやヘッジファンドだけが知っている秘密の知識だった. しかし, その隠された知識によって米国株取引の約半分がHFTのマーケットメイクによって執行されているという都市伝説まがいのことが起こっている(2012の調査). そして日本におけるHFT業者は1つしかなく, さらに株式取引は金融庁への届け出がないと禁止されている.
一体なにがおこっているのだろうか? そもそもHFTについて日本語の資料を調べてみると東京証券取引所のワーキングペーパーがよくでてきて, HFTとはなんなのか調べてみました的なものが見つかる.
そしてHummingbotは, このマーケットメイクという秘密の知識を民主化することを目指すという. 1
Hummingbotで儲かりませんでしたテヘペロ発言
Hummingbotは目玉アルゴリズムとしてA&Sアルゴリズムを掲げていて, それを実際に本人がつかってみて感想を述べる展開はなかなか熱い.
まず, Hummingbotを褒める. マーケットメイクの社会的意義とは, 価格の急変動を抑えることであり, 特に値動きの激しいクリプト市場こそ, より一層意義は高まる. 素晴らしい, PMF間違いなし.
そして使ってみた結果, 美しい右肩下がりの損益グラフができあがり儲かりませんでしたとのことw いやふざけんなよ, あなたを信じて実装してわたしも右肩下がりの損失がでたぞ? 世界中の駆け出しボッターとわたしが涙した.
しかし, まあこれはセミナーを盛り上げるためのパフォーマンスであり, デフォルト設定で利益が出るほど世の中はあまくなく, ここからなぜ理論がうまく機能しないのかの分析と改善策の提示が続く.
トレンドと逆方向にポジションを持って負けるというのは, いわゆる逆選択のリスクと呼ばれる. また在庫リスクについては, 片方にポジションが偏ってしまう課題に対しては, 私の理論でうまく制御できたとドヤっていた.
A&Sがうまく機能しないのは情報の歪み
A&Sは前提として株価はブラウン運動のように上下に振動するという前提をおいているが, 現実はもっとカオス. ここにまず理論と実際の乖離がある. mmbotはレンジに強く, トレンドに弱い. そして市場はレンジ相場もあればトレンド相場もある.
そして株よりクリプトは, より急激な暴騰/暴落が発生しやすい傾向がある. いわゆるパンプ&ダンプ, シンプソンチャート. これによるドローダウンで損をするのだ. 価格の急変動を食い止めるために立ち上がったマーケットメイクのbot戦士たちは, 自らの命を生贄にして大きなXに飲み込まれていくのだった.
そして, このトレンドとはいわゆる情報の歪み, Imbalanceという表現がされる. バランスがとれてない, 売手と買手の綱引きで価格が上下したはずがどちらかに相撲取りが加勢して片方を引きずり倒す. ブラウン運動の美しき確率的な理論だけでは現実を説明できない.
じゃあどうするか, ここでマーケットマイクロストラクチャーという顕微鏡で市場の歪みを見てみる.
マーケットマイクロストラクチャーとは価格を動かすXを説明する
マーケットマイクロストラクチャーについて. 通説的な定義では「明示された取引ルール下における資産取引のプロセスと結果」.
日本語情報があまりなくよくわからないので, ここではわたしの雑な理解を述べる. マーケットマイクロストラクチャーとは, 値動きをひとつひとつの取引をみることによって解明していこうとするアプローチ方法.
Stoikovさんのセミナースライドの一枚目では, 在庫リスクの問題が確率的に解消されるマーケットメイクシミュレーションの図と, 顕微鏡のマーケットマイクロストラクチャーの図が書いてある. マーケットメイクは値動きは上がれば下がるを前提にするが, それでも値動きが起こりそれはなにによって引き起こされたのかを一つ一つの取引, そしてそれらを統計処理して見えてくる傾向から判断していく.
そもそも仲値は適正価格なのか?
Is the midprice the right price?
最もチンパンなマーケットメイクは, ある価格の上下に価格が綱引きすることで, 売買が成立して利益が出るので, とりあえず最良価格のbid/askの平均の上下数tickに指値注文をいれればいい. ここには仲値, midpriceが市場の適正価格(fair price)という前提があるが, そもそもそれは正しいのか?
この前提がそもそも正しくないからわたしの理論がうまく機能しないのであり, それはレンジの均衡を崩す情報の歪みが影響をしている. じゃあ, その情報の歪みを引き起こしているのはなにか?… というようにここからマーケットマイクロストラクチャーのアプローチで改善を検討していく.
ここでは, 数年前に発表されたmicroprice2やVAMP(Volume Adjusted Midprice)による改良が示される. そして, 最後に自分の式をVAMPで改良したものでバックテストして改善を示して, おおVAMPはマジカルだ!といいつつ, 最後のオチとして数時間動かしたら大きなドローダウンで焼かれましたといって終わる. なおVAMPは2022に定義されたようで情報が見つからなかった.
動画はここまで.
🗺マーケットマイクロストラクチャーの世界観
ここからはマーケットマイクロストラクチャーについての最近調べていることや思っていることを初学者の視点から, 少し吐き出しておく. なおマーケットマイクロストラクチャーの参考資料はいろいろあるが, あえて言えばAdamの情報がいい3.
✅市場におけるトレード用語をていねいに押さえる
なるほど, マーケットマイクロストラクチャーか, 調べてみよう. としたときにまずぶち当たる壁は, そもそもトレード用語をよく理解していないところ. マーケットマイクロストラクチャー以前に押されるべきことは, トレード基礎用語の理解だと思う.
はじめ言葉ありき. 背伸びしてはいけない. 基礎と侮っていたことを深く理解する.
bid, ask, spread, market order, limit order… などなど, マーケットマイクロストラクチャーはこのような市場を構成素の要素同士の関係性を議論するが, そもそも構成要素自体の定義を理解していないとその先もわからない. その市場における概念をモデリングしてソフトウェアのドメインとしてコードに落とすこともできない.
検索で引っかかる記事ではどうも曖昧な個人ブログがおおい気がする. 日本固有の俗語のような用語も多く, 英語の検索のほうが理解が深まる場合もおおい.
このへんの用語は株/為替/仮想通貨など, だいたい共通で使われていて解説サイトも分野ごとにそれぞれあったりする(がそれでも英語で探したほうが理解しやすい). イチオシはInvestopedia. もちろんWikipediaもよい. ChatGPTはまだ使い慣れてない.
✅市場の性質を説明する概念と具体的統計量をわけて押さえる
仮想通貨botをつくってみようとするときmmbotからの登竜門がなかなか険しい道であるが, それでもこの道を選択するメリットとは, マーケットメイクが古くは株取引から続くアルゴリズム取引における古典にして王道であり, ここからマーケットマイクロストラクチャーの道へと続いていくということで, 深い理解が得られる点かもしれない.
市場の特性として, 具体的なインジケータという名の統計量とともに, それらは市場のどういう特性を説明しようとしているのかを抑えておくことは, まず上から物事を眺める上でよい.
有名なのは, 流動性と変動性. しかしマーケットマイクロストラクチャー的にはもう少しいろいろある. 最も大事なのは偏り.
- Imbalance: 注文の偏り.
- Agressiveness: 注文の積極性.
- Intensity: 注文の強さ.
- Resiliency: 市場の回復力.
- Volatility: 価格の変動性.
- Liquidity: 注文の流動性.
市場を説明するメタな概念とその具体的なインジケータという関係性を押さえると市場の理解を助ける.
✨オーダーフローとその可視化技術で次元が増えていることの衝撃
マーケットマイクロストラクチャーはGoogleで検索しても日本語情報はほぼ出てこない. しかし, それと同じようにもてはやされている用語がある. それが, オーダーフロー. 注文フローと呼ばれている.
わたしはmmbot開発に疲れ果てて, 裁量トレーダーの情報を集めてているうちに, 裁量トレードにおいてオーダーフローの波が押し寄せ, 話題が花開いていることにとても驚き, そしてワクワクした. そしてそれは, 杉原論文で描かれていたマーケットマイクロストラクチャーの世界だった. Order Imbalanceだ.
この一大トレンドについて, それを後押ししているのは, 可視化ツールの発展及びそのサービスだと思う. オーダーフローという考え自体は昔からある. しかしそれは, たとえばfootprint という可視化手法によって横軸を時間軸, 縦軸を価格別チャートというチャートの中にチャートを埋め込むような今までみたことがないような図をしている.
これは, わたしがそもそもこういうものに触れたことがなかったからだけかもしれないが, チャートの概念が次元が一つ増えているという意味で衝撃的だった.
✨タイムスタンプ以外の別世界があったことの衝撃
さらに, これらのツールはマーケット情報を時間以外にも取引数, 出来高, 取引金額という情報を元にサンプリングして可視化する方法にもこだわっていた. これらは, それぞれタイムバー, ティックバー, 出来高バー, ドルバーとよばれるたぐいのものだ.
これにもとても驚いた. なぜならばわたしは時間足というタイムスタンプで情報をグルーピングした見方しか知らなかったが, ほかにも世界があった. 言い換えれば, ヨーロッパしか知らなかった西洋人は世界にはアメリカ大陸や中国大陸, アフリカ大陸をしった. そこには肌の色も体格も異なるが, たしかに同じ人間がいた, というような, 切り取る角度によって世界が変わるというような新しい世界があったことの驚き.
世界の見方とは, いわゆるローソク足チャートとは, 世界をある切り口からグルーピングしていただけで世界はもっと広かった.
Where mmbot meets market microstructure
🔍mmbotをどう学ぶか?
ネットの情報は疑問に思ったときに検索を通じてピンポイントに情報を押さえることができるか, 上から体系的に調べたほうが効率という点でよい. 個々のブログはどうしても断片を切り取ったものになり, それを自分の知識体系として統合するのは大事だが, 構造化された知識を上からまずは把握してから各論に入るほうが効率がいい.
ことマーケットメイク, マーケットマイクロストラクチャーについては俗称杉原論文という, たくさんの人が読んでいるPDFがネット上にあり, これがマーケットメイクとマーケットマイクロストラクチャーの入口としてよい.
[執行戦略と取引コストに関する研究の進展 - 杉原慶彦2012
そして従来だとここから深堀するために, 有名なA&S論文に突入するパスが王道のようだった.
[High-frequency trading in a limit order book - Avellaneda and Stoikov 2008
地雷を踏むようにして王道にツッコミ被爆した私としては別のパスとして今回のStoikovさん動画をみるのはよいと思う. 論文のほうは数式がおおく理解に苦しむが, 私の理解が間違ってなければそれを実装しようとしたとき最小二乗法をつかって実装できたというオチだった. そして稼げなかったわたしが言うのも説得力がないが, マーケットメイクにおけるビッグイシューは, 理論的な最適スプレッドよりも, トレンドに弱く従って情報の偏りの改善のほうが大きい気がする.
BITMEXセミナー動画なんかも古いものだがとてもよい. またはHummingbotのブログやYoutube.
このツイートは示唆に富む.
;; https://twitter.com/quant_arb/status/1516630021389131781
Stoikov papers are great/ huge fan of microprice. Just a quick reminder that Avellaneda and Stoikov was 14 years ago and there are newer and better papers since. Please use actual data in your sim w/ actual fill/trade/lob data especially, not a stupid Poisson distribution
🗃マーケットマイクロストラクチャーの車窓からみたmmbotたち
ここではいわゆるmmbotと呼ばれているものについて, いろいろみていく. なおこの取組のモチベは, どうもmmbotという言葉がそれぞれ微妙に違う気がしたので, その微妙な差異を自分の言葉で補ってみたいというものがあり, 従ってこれは正解ではなく切り口.
まず, mmbotと呼ばれているものについては広義と狭義の切り口があるように思う.
- 狭義: 推定したfair priceの両側に指値を同時に何度も高速に指していく, 厳密なマーケットメイクの方法.
- 広義: 売りと買いの両方の板を提供し続ける, つまり指値注文をし続ける, マーケットにメイクしつづける方法.
まず違和感を感じたのは, HFTとはミリ秒を削る世界で注文を高速で注文をいれる超高速な戦いであり主な手法がマーケットメイクであり, C++とTopCoderを極め人間性を捧げた男たちが目を血走らせて戦う世界をイメージしていて, mmbotと株取引HFTの間にけっこう温度差があるように感じた4. 前者は狭義のmmbotにあるのに対して, クリプトmmbotは後者が多い印象.
magito mmbot
有名なブログ記事. わたしもここから入門した.
Python3 MarketMaker(MM)BOTのサンプルロジックとソースコード|magito|note
このポイントは,
スプレッドの両端から数量X(例えば0.001BTCなどの微小量)だけ指値をスルーして、その下の最良位置に自分の指値をおく
ここで計算しているのは, いわゆる板の厚み, デプスとして知られている概念. デプスを計算して, 一定のデプスをしきい値にして指し値価格を決定することで, 値幅を大きく取る. このdepthのしきい値を極度に大きくすると, それはいわゆるヒゲキャッチという方法になる.
また, 大口注文が板に置かれるとその方向にトレンドが生じるという特性がある. これは大口の指値を取ることで自分のポジションを解消したいという傾向かもしれない. 大口注文を検出したらその1tick手前に自分の指値を入れて大口と一緒に自分の指値もテイクしてもらう方法はペニージャンプという. ここでいうペニーとはたぶんイギリスのコインで1円みたいな小さな意味.
ヒゲキャッチbot
別名, ヒゲ取りbot, ひげ取りbot. たまに起こる瞬間的な価格変動によって起こるヒゲを取る. これは売りと買いの両方で指値で待ち構えればmmbotとなる. しかし空売りはしないというリスク管理を考慮したアプローチもある.
そして, このヒゲという怪しい言葉はそもそもマーケットマイクロストラクチャーの視点ではなんなのだろうか? 言い換えると, ヒゲはなぜ発生するのか?そもそもヒゲとはなんだ?
通説では, ヒゲは板のスカスカな時, 大口注文のテイクでごっそり板がなくなることによって生じる. エッジはマーケットインパクト. これをマーケットマイクロストラクチャーの視点から見るならば, 板情報や約定履歴に大口注文がごっそり板を取っていった爪痕が残っているかもしれない.
面白いことは, 見える時間足によってヒゲに見えたりヒゲに見えなかったりするということ. 時間足とはタイムスタンプのグルーピングのひとつの手段でしかなく, 5分とか15分とか1時間とかで見える世界は変わる. さらに時間とは市場のひとつの切り取り方でしかなく, それがたまたまヒゲに見えているが, その意味するところはなんだろう?
これはとくに1時間でみれば, 単一の大口注文ではなく, たくさんの注文が板に入って急激に市場が動いてそして戻った場合も, ヒゲにみえるということだ. すると, ヒゲキャッチはチャートの見方でイナゴbotと呼ばれるたぐいのものになる.
そしてヒゲキャッチやヒゲ取りと呼ばれている場合, 大口とイナゴのニ種類が存在する.
イナゴbot
何かの拍子で起こる暴騰や暴落に対してなるべく早めに順方向の取引を行うbot. そし狭義ではイナゴフライヤー連動botであり, しかしイナゴフライヤーとは売買出来高の偏りであり, マーケットマイクロストラクチャー的には, VOI(Volume Order Imabalance)と呼ばれるたぐいのものだった.
mmbotに戻ると, mmbotは情報の偏りによるトレンドに弱く, そして出来高の偏りは情報の偏りの重要な要素, という関係がある.
このあたり, 出来高分析だったり, ボリュームプロファイルという用語でノウハウが花開いてる. そして裁量トレードでは可視化ツールを駆使して情報の歪みを可視化してトレードしていることに驚いた. さらに, 出来高だけではなく, OI/Liquidationというようなデリバティブデータも駆使していた, 驚いた.
狙撃bot
これはわたしが勝手にそう呼んでいる. 一般的には, mtbot, 秒速テイカーbot, 高頻度テイク型などなど.
高頻度botとしてmmbotのように語られるものの, これは価格を予測してその方向に順張りをする. 高頻度テイカーbot. はじめは高頻度botをmmbotと呼んでいると思っいたが, どうやら高頻度botという単語はメイカー型とテイカー型がある.
わたしは, 最近(2022)にでた調査レポートですこし驚いた.
高速取引(HFT)のスピード競争の現状とその影響(2022)
東証システムで稼働するHFTは大きく3タイプがある.
- メイク型: マーケッメイク戦略とする
- バランス型: 1と3の両方.
- 狙撃型: 価格予測をするディレクショナル戦略またはアービトラージ
そして近年の傾向では, 従来のマーケットメイク戦略ではなく, 価格予測をおこなうようなディレクショナル戦略を用いるHFTが急増してきたとのこと. もちろん従来型のマーケットメイクを行うHFT業者もいるが, マーケットメイクはトレンドに弱いため, 価格予測によるディレクショナル戦略に流れているよう. そして, 狙撃型と呼ばれるタイプはIOCによる指値注文を行う. IOCとは, Immidiate or Cancelで, 板に乗らないで注文が成立するかキャンセルする.
大資本が板に乗らない注文で大量高速にIOC注文で板をとっていく. いったいこれはなにを意味するのか? マーケットメイクとは, 板を提供することで流動性を与えかつ暴騰暴落を緩やかにすることが目的な気がしたが, これはどういう影響があるのか? マーケットマイクロストラクチャーの知識が足りなくてわからないがどうもマーケットメイクを国の認証つきで許していることの前提が変わる可能性も感じた.
話はそれたが, 高頻度botといってもmmbotを指すわけではなく, テイク型の高頻度もいるということ.
richmanbtc mlbot
mlbotとは, 機械学習をつかって自動売買をするbotの総称. ここでいうbotは書籍およびチュートリアルで利用されていたmlbotを指す. もちろんrichmanbtcさん自体もこのロジックはもう使っていない気がする.
わたしは書籍5は購入したが, 流し見した程度でがっりつ取り組んだわけではないので理解が間違っているかもしれないが, このチュートリアルは売買に指値をいれるという点ではmmbotの派生といえる.
チュートリアルの場合, 執行戦略は, ATR*0.5の位置に指値を置くというもの. ATRとは有名なボラティリティの指標であるが将来のボラティリティ自体を予測しているわけではない. 機械学習で予測しているものは, 時刻tにおいて戦略xを執行したときに利益が出るかどうか. 時刻tにおいてココでいくのかい?いかないのかい?どっちなんだい?というのをMLでポン!していく.
そしてMLでポンしないケースもある.
2週間で利回り4000%超を達成したトレーディングbot構築の考え方 - note UKI
🚀終わりに: そしてクリプトデータ駆動トレードの世界へ
軽く動画の感想を書くはずが筆が進んで長文になってしまった. とりあえずまとめたい.
まずわたしは今はmmbotをやってないが, 代わりにmmbot派生の方向性をマーケットマイクロストラクチャーの視点から眺めている. そして, また心がけていることは, おそらくネットに転がっている情報にエッジはないので, みんな見向きもしないニッチな市場でお小遣い落ちてないかなと探している. Hummingbotも深堀してみたい気もしているが, みんながやっているオープンソースというところに地雷の匂いをプンプン感じていて, 片足もげた自分は怯えて様子をみている.
その上で, 自分ではクリプトデータ駆動トレードと呼んでいる世界に行きたいと考えている.
✨仮想通貨トレードはテクノロジーが牽引している印象
仮想通貨トレードをするとき, APIが揃っていたりUIがお洒落だったりすることを良く感じる. チャートで見れる情報やAPIで取得できる情報も多い. これはソフトウェア開発者が仮想通貨トレードの界隈を牽引しているような空気がある. そもそも仮想通貨自体が株やFXに変わる第三の勢力としてテクノロジーととても相性がいい.
データをトレードに活かす風潮は, 株や為替よりも個人の投資家がアクセスできる情報が多いからのような気がする. あまり詳しくないが, 株などはヘッジファンドのような大きな資本を持っていなければアクセスできないような情報はあるのかな?
その点, クリプトに関してはAPIで情報公開されているものならば, 誰でも手に入れることができる. 便利なWebサービスも, 結局取引所のAPIから情報を取得して可視化しているに過ぎない. そのへんの気前の良さが, なにか新しい風なのだろうか?
✨ファンダメンタルズやテクニカルを対する第三勢力としてのデータ駆動トレードの台頭
以下を読みつつ, わたしも感じたことを追記.
「ロウソク足」vs「データ」戦争を終わらせに来た!!!|よーぶん|note
従来, テクニカル分析というと, チャートをみてその値動きをテクニカル指標を元に予測するような印象があった.
しかし, 仮想通貨トレードの裁量手法を調べていて驚いたことは, 従来のテクニカル分析に加えて, 取引所から手に入るローソク足以外のデータを用いて市場の歪みを予測しているところだった.
これは技術やAPIドリブンで取引所が作成されたからなのか, 規制が少ないからなのか, オープンな文化だからなのかわからない. しかし, それはとても斬新に見えた. これらの方法も, 一応はテクニカル分析に分類されるものの, それはファンダメンタルやテクニカルに変わる第三勢力としてのリアルタイムデータ分析というべきようなものだった. それらは日本語の情報はとても少なく, 英語の情報が多い.
そもそも, タイムバーというのが世界のひとつの切り取り方に過ぎなかった. ローソク足チャート以外にもバーはたくさん種類がある. Footprintチャートにワクワクするその背後には, 既存のパラダイムを破壊して新しい世界を見せてくれる点にあると思う. ローソク足の呪縛から抜け出すことが必要.
✨トレードに関わる海外と日本の情報格差問題
どうもやはり日本語でアクセスできる情報がとても少なく, しかし海外に目を向けると面白い世界がたくさん広がっている. これはトレードに関わらず日本と海外の格差という形でいろんなことに感じるパターンだ. そして同じことを考えている人もみかける.
;; https://note.com/pekiron/n/n39402cae5482#lFnlh
日本語の記事に限定しなければ、有益な情報は大抵がネットに落ちています。自分はTwitterに限らず海外掲示板や各種アプリ、ブログ、論文プレプリント等で情報を収集していますが、日本では議論されないようなベクトルの話が多いので重宝しています。
定量的な分析となると論文や記事等そこそこ充実しているイメージがあるのですが、こと裁量に関するものになると日本は杓子定規なテクニカルばかりで幅も狭く、何故かクオリティが落ちてしまいます。 DefiやNFT等の記事は日本でも充実していますが、純粋に裁量のものになると同じようなものばかりですね。
その辺に危機意識といいますか、海外での情報量との格差を深刻に憂いているので、せめて無料で読めるなんらかの纏まったテキストでもあればいいのではと、こうやって微力ながら書く事を決めた次第です。
;; https://www.pr1sm.com/trade/footprint-charts-trading-guide/
ここからは個人的なつぶやきですが、フットプリントは世に出てきて既に20年近くが経過しています。しかし日本語でそれを解説している情報はほとんど見かけることがありません。英語ならば非常に多くの情報が出てくるにもかかわらずです。
つまりフットプリントは既に真新しい情報ではなく、よく知られた存在と化しています。なので、今となってはもったいぶって隠すような情報ではなく、むしろトレーディング界隈では知っていて当然とも言えます。
インターネットが高度に発展した現在では、以前よりも洗練された良質な情報を『無料』で得ることができますが、残念ながら国内ではそれを有料で掲載しているケースが多々あります。これはフットプリントに限りません。
この, 海外にワクワクするとともに謎のもやもや感, これはきっと幕末の異文化への憧れと危機感と似ているに違いない. この記事をノリで書いていたらけっこう長文になってしまい若干の後悔があるものの, ここまでダラダラ書いてしまったモチベはここにもあるだろう.
✨Where 裁量 meets 自動
わたしはmmbotによる敗北感と裁量トレードの世界のワクワク感から, なるべく裁量で稼げる方法や簡単な方法を, ソフトウェアで自動化するようなことができないか検討している.
裁量から自動売買へのパスは多いかもしれないが, 自動売買に取り組んだ結果裁量の重要性に気づいてそっちに憧れるというパスは少ないかもしれない. もちろんその道を進んでいる先人もいるだろう. または, 隣の芝は青く見えるのかもしれず, お互いがお互いにあこがれている片思いの世界なのかもしれない.
そして, マーケットマイクロストラクチャー, 言い換えればオーダーフロー分析や出来高分析だけではなく, デリバティブデータやオンチェーンデータの分析など, まだわたしが理解していないアプローチもあり, 素晴らしい可視化ツールとともになにかすごい世界がありそうな気がした.
それらをまるっとまとめて, なにやら新しい世界観を指し示す用語を現在探している. ファンダメンタルズやテクニカルのようであるがちょっと違うようにも思える, 第三勢力. クリプトデータ駆動トレードの台頭.
もっとも, mmbotの世界観にあこがれて突っ込んで片足もげた教訓を活かすならば, 手を広げずに対象を絞ること, ニッチをみること, ピボットは気軽にすることをモットーにしておく. そうしないと今度は片腕がもげるかもしれない. そしてmmbotの改善のカギがマーケットマイクロストラクチャーであるならば, アイデアを元にmmbotを改善できるかもしれない. どうなるかはわからない.
-
What is Market Making? Interview with Hummingbot CEO Michael Feng - YouTube ↩︎
-
micropriceについてもStoikovのモチベ解説動画がある. The Microprice: Estimating the fair price, given the state of the order book. - YouTube ↩︎
-
Market Microstructure Explained - Why and how markets move - Tradingriot.com ↩︎
-
ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち - WikipediaというHFTをテーマにした映画がある. ↩︎