瞑想は心のスポーツの時代、心の穏やかを目指す点取合戦
最近のイベントで瞑想の数値化チャレンジという記事が推薦されたので、興味を持った.
- Tokyo Quantified Meditation Challenge - An Era Where Meditation Becomes a Quantifiable Achievement - YouTube
- まるでスポーツのようにいかに深く瞑想できるかを競う「瞑想の数値化チャレンジ」、10月2日(木)日本初開催! | All Here SAのプレスリリース
心を穏やかにするための瞑想が、心を荒ぶるような競技に?しかし、そもそも瞑想は心を穏やかにするというのは一面的な部分しかないのでいいのか?いろいろツッコミどころはありそうだが、新しいという点ではわたしはおもしろいと思った.
20分の瞑想のうちのもっともよい3分でスコアリングして比較. QM3という指標.
- CMI=集中力マインドフルネス指標
- SMI=心の静寂指標
この記事でかかれている瞑想の深度の指標をAIをつかって調べてみたのだが、どうもよくわからない. 1 しかし、取り組みはおもしろいので、自分でも集中瞑想で使える指標を調べてみた. せっかくなので、実際にMuseのセンサーで取得したデータも分析して、スコアリングするところまでをやってみた.
集中瞑想の深さを示す指標をしらべてみた
瞑想の範囲を集中瞑想とする. Muse S Athena2をつかって、使えそうだなと判断した指標をいくつか列挙してみる.
瞑想に限定せずに、フローとかゾーンとかも含めて調べるともっと見つかるかも.
Peak Alpha Frequency(PAF)
脳波においてアルファ帯で最もパワーが高い周波数. これが認知パフォーマンスを測る指標として注目されている.
集中瞑想が進むにしたがって、アルファ波は減少を仮定. 3
Muse の推し指標. Muse プレミアムに課金するとアプリに表示される指標. これは自分でも計算可能であることは、前回の記事で検証した. 4
Frontal Midline Theta(Fmθ)
前頭部中央において観察されるシータ帯. タスク中に力を入れて集中しているとき」に、この前頭中部のシータ活動が増える.
集中瞑想では、値が大きくなると推測.
なおMuseのEEGセンサーの電極位置はAF7/AF8なので、一般的な前頭正中線(Fz〜Cz付近)とは離れる. fmシータそのものの計測ではないという制約はある.
Spectral Entropy
信号の「周波数スペクトル」の「不規則さ」または「均一さ/偏り具合」を定量化した指標. 値が高いほど「スペクトルが均等に広がっている」=「特定周波数に偏っていない/雑多」な状態、逆に低いほど「一部周波数にパワーが集中している」状態.
集中瞑想中にはアルファ/シータが支配的になることで、スペクトルが偏りを持つことが仮定されスペクトル・エントロピーが低めになるという仮説.
そこまで根拠がある指標ではなさそうだが、単純に脳のエントロピーを測ってみたかった. 5
HbO/HbR
脳血流・代謝活動の指標. HbOは酸素と結合したヘモグロビンの濃度変化. HbRは酸素を放出した後のヘモグロビンの濃度変化. 脳活動が活発だと、HbOが上昇し、HbRが減少.
集中瞑想では、脳の血行がよくなってHbOが上昇/HbRが減少を仮定.
Muse S AthenaだとfNIRSでこれが計測できる. 集中がうまくいけばきれいな線形グラフになるはず.
バンドパワー/バンド比
バンドパワー=各周波数帯(θ/α/βなど)のパワーバランス. 古典的分析.
- θ/β 比: 集中 vs 注意散漫の指標
- α/β 比: リラックス度の目安
- α/θ比: 眠気と集中のバランス
実際の計測結果と考察
実際の集中瞑想の結果とその分析.
https://github.com/tsu-nera/titan2/blob/main/issues/003_improve_daily_report/snapshot/REPORT.md
アルファパワーの減少は確認できた. アルファー波が上がればマインドワンダリングするようになることを考えると、アルファ波が少なくなるとマインドワンダリングが減る=集中と解釈.
fNIRSによるHbOが上昇し、HbRが減少も確認できた.
一番の目標である、fmシータなのだが、これがどうも期待するようにならない. 際立ってシータ波が大きくなることもない、むしろアルファ波と一緒に弱まる. こればMuseの電極の問題なのか、わたしの修行不足なのか.
おまけでいれたSpectral Entropyも、瞑想が進むにしたがって乱雑度が小さくなったことが確認できた. 全体的にいえることは、5分ごとのセグメントにわけて、瞑想のスコアをみていくと、瞑想の経過時間にしたがってどう変化していくかが把握しやすいと思った.
また、実際に分析してみると、式を当てはめるだけだとうまく値が算出できなくて、外れ値とかを除去する必要があることがわかった.
瞑想スコアの算出
最後に、5つの指標をもとにAIに重み付けのスコアリングをお願いした.
総合評価: 総合スコア: 44.0/100 (要改善!)
- 瞑想深度 (Fmθ): 43.2/100 (要改善)
- 集中度 (SE): 29.5/100 (要改善)
- 瞑想深度 (θ/α): 13.8/100 (要改善)
- リラックス度 (α/β): 76.7/100 (良好)
- 周波数安定性 (IAF): 88.1/100 (優秀)
スコアはゲーミフィケーョン的なおまけだが、Muse Appの謎のロジックよりも、自分で中身が分かるのが魅力.
スコアリングよりも限定した指標がシンプルでよいかもしれない. ダイエットも指標が多すぎると逆に混乱してしまう、体重と体脂肪率だけを追いかけるようなシンプルな形のほうが継続しそうな気がする. PAFとfmシータが狙い目か.
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All Here Quantified Meditation Report Explained by Dr. Lionel Newman | Neuroscientist | All Here - YouTube, 最近公開された動画でもうすこし詳細がわかる. EEG MicrostateとPAFが研究されてる. ↩︎
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Amazon.co.jp: Muse S Athena: 脳感知ヘッドバンド - 瞑想の追跡とモニタリングのためのニューロフィードバックデバイス ↩︎
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The silence of mind. A talk by Erkin Bek, Nick Rusling, and Christoph Michel at Tokyo University. - YouTube, t40手前ではマインドワンダリングとアルファ波の関係を説明している. アルファ波が減れば集中. ↩︎
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わたしの大学での専攻は情報理論だったので. ↩︎