はじめに

✅談志のやかんをツェッテルカステンで表現する

立川談志師匠の演出したやかんについて.

やかんは古典落語としては定番なのだが, ここに思考ストップという独自のテーマを設定して演じている. 「世間はやかん」という書籍も発売されている1.

わたしが学生のときにこれをきいたときかなり衝撃をうけ, そのまま2023までズルズルと引きずっており, 今もときどき思い出す. 最近, ツェッテルカステンに結構取り組んでみて, 改めてこのテーマに関しての発見をUpdateしたい. ツェッテルカステンについては過去記事参照.

日本語のツェッテルカステン解説本(TAKE NOTES!)を読んで考えたこと | Futurismo

✅哲学をテクノロジーでハックする

さらに談志のやかんのテーマの先にある目的は, 知識や思考をソフトウェアでどう扱うかということだ. 哲学をテクノロジーでハックする. ここでいう哲学の意味は, 疑うというアクションを指す言葉として使っていて, それは世の中の当たり前を疑うという談志師匠のアイロニーを指す.

そのための手段がツェッテルカステンという仕組みだが, そもそもツェッテルカステンが誕生したときはデジタルではなくアナログのカードだった. ツェッテルカステンよりもメモのデジタル管理に興味がある.

おそらく談志師匠のやかんが書籍になり人気となるということは, そこに共感する人も多く, そしてなんとなくそれを自分の生活でもやっている人も多いのかもしれない. そして, 思考術だったりメモ術だったりノート術をその時々のトレンドを取り入れながら各々がぼくのかんがえた最強の思考術なるものをそれぞれもっているのかもしれない.

わたしも, これについていろいろ試している. プレインテキストで管理したり, Evernoteで管理したり, マインドマップやNotionを試したり… やりたいことは昔から変わらないが, Getting Things Doneな方法をいつも探している. どうやって思考を管理するか, これはライフハックのトピックであり, 普通のやつらの下をいきたい2ハッカーにとってのワクワクハッキング問題なのである.

そしてこのテーマにおけるぼくのかんがえたさいきょうの思考管理システムの提示をしようとするものであり, これは真似されるものではなく刺激を与えることでいろんな人がいろんなぼくのかんがかた最強をシェアするのが面白いと思う.

知識を自己と他者で分けるとする. 先日の記事で, 自己とはなにかをツェッテルカステンで定義してみた.

🖊ツェッテルカステンで自己分析してみた - アイデンティティクライシスを経験している青年へ | Futurismo

こんどは他者とはなにかについて, ツェッテルカステンを軸に考えてみようと思う.

✅虚無との戦いを終わらせる

最後に個人的ポエム.

談志のやかんを分解する

談志のやかんのテーマは思考ストップ

人間は不安定に耐えることができない. だからいろいろと意味をもとめる. 意味なんて何もないがそれでも定義をして意味を見出さないと不安定に耐えられない. だから無理矢理にでも自分の言葉で定義する. そしてその先を考えない, というもの.

「やかん」のテーマは、人間の答えなんていい加減なものでいいんで、「とりあえず答えがあればそれでいい」ということだ。「思考ストップ」「どこまで行っても際限がないから、どこかでとめておく」

;; 立川談志遺言大全集より

思考ストップがテーマ. いろいろと世の中の言葉には定義がある. しかし自分でこうだ!と決めることによってその先を考えない. 談志師匠の具体例が落語の中で語られる. 3

(八五郎)努力ってなんですか?

(隠居)バカに与えられた夢.

(八五郎)上品ってなんですか?

(隠居)あんなものは欲望に対する動作がスローモーなやつだ. そもそも先祖が泥棒じゃないか.

そして, そもそも世の中で正しいといわれていることについて, 自分の頭で考えたらそれはおかしく, むしろ自分の考えの方が正しいということをアイロニーで示している.

(八五郎)地球はまるいんですか?

(隠居)地球は平坦だ.

(八五郎)地球儀ってみたことないんですか?

(隠居)まさか文法具屋で売ってるものを信用してるんじゃないよな?

(八五郎)だって引力があるから立ってるじゃないですか?

(隠居)引力じゃないよ, 自分の意志で立ってるんだよ. 引力でポコチンが立つか?

談志のやかんをツェッテルカステン的に表現すると?

談志のやかんのテーマとは, 世の中の正しいことよりも自分の頭で考えたことのほうが正しいということで, さらに自分の言葉で定義することで, その先を考えない, 思考停止するということ.

これは, 最近わたしがツェッテルカステンについて取り組んでいる, 自己の考えと他者の考えを厳密にわけて, 自己の知識(わたしはこれを知恵と呼んでいる)を, いわゆるPermanent Noteに書き表していく, ということになる.

具体的には「🌱努力とはバカに与えられた夢」というタイトルを持つPermanent Noteを作成する.

そしてメモ本文としてをもう少し詳細にその意味するところを書き表す. Permanent Note, 日本語訳が永久保存版のメモという微妙な感じの訳後も, Permanentが思考ストップという意味ならばすこししっくりくる気がした. 私にとって, 努力とはこういうものである, という永久思考ストップでその先に行かない, という意思表示.

ただし, 実運用としてはPermanent Noteにある概念をズバリXとはと言い表せることはなく, 「XはYに似ている」だったり, 「XはZの一部である」みたいな, 関係性を記述するようなメモが結構でてくる. そしてそれらを束ねるようにして, Reference Notesでまとめる.

具体的には, 「📍努力とは」というタイトルを持つReference Noteを作成する. そして, そのような「とは」についてのメモを, 情報アクセスしやすいようにして目次のような階層構造にリンクを貼った上で, それを管理する.

思考ストップの結果をプレインテキストにダンプ

思考ストップの結果, つまりPermanent Noteへのアウトプットをプレインテキストに保存する. ここでプレインテキストについて, 過去記事を参照しつつ, 魅力を再掲.

プレインテキストへの決意 ~for progmatic programmer~ | Futurismo

スーパーハッカーの生産性のひみつ

達人プログラマーが取り扱う情報は、知識です。 その知識を永続的に格納するためのフォーマットで最も適しているものが、プレインテキストです。 プレインテキストを使えば、手作業、自動的な作業を問わず、 事実上すべてのツールを使って思い通りに知識を操作することができるようになるのです。

大事なポイントは, 思考がプレインテキストになることによって, それは情報として操作可能となるということ.

さて, 思考というものを, メモというデジタル情報に保存して, それをツェッテルカステンのメモとして扱えるようになった. ここからどうやって, 思考のデジタルトランスフォーメーションができるか?

思考の断片をソースコードのように管理する

ここからは, Permanent Noteとして捕まえた思考の断片をどうやってITを駆使してハックするか.

まず, プレインテキストでメモを管理し, それをエディタで編集していく. もやはこの形式に落とし込んだ時, それはメモをソースコードのように管理することと区別がなく, したがって思考の断片はハッカーの手中に落ちたも同然なのだ. すると, コーディングのノウハウは思考を紡ぐ作業に応用できる. 素晴らしいな.

プレインテキストをgrep検索して5秒でジャンプ

ツェッテルカステンにおいて, 最も重要な機能はなにか?といわれれば, grepだと思う. 言い換えればキーワードによる高速全文検索とその場所へのジャンプ. あたまに浮かんだフレーズを5秒以内にフェッチすることが大事だ. 無駄な高速化ときくと, なにやらハッカーはワクワクする.

だいたいある思考というものが, 過去にも同じことを考えてそれをメモしていたということは, けっこうある. このとき, 思考の速度で情報にジャンプできるかどうかの価値は高い. これこそ, デジタルツールでしかできない思考管理方法だと思う.

もちろん, 理想的には適切にタグを貼り付けたりリンクを貼るようなメンテナンスで情報アクセスできればいいのだが, 実際つかっていると 過去数年前の日記でこのトピックについて考えたかもなというとき, 過去の自分ならばこういう表現をするだろうというキーワードを打ち込む検索シーンが多く, タグがあまり役に立たない. また, タグとはある概念をあらわす単語だが, 検索したい時は熟語だったりする.

わたしはまずタイトルで検索して, そののち全文検索をかける. そしてタイトルで引っかからなかった場合, そのタイトルは悪いものでありその場でUpdateする.

思考の断片をキャプチャーしたら日記メモに書いていったん蒸留させる

わたしの日々の思考の収集方法は, PCをつかっているときは日記のメモにまずはアイデアを書く. 日記は, 日ごとではなく週ごとに1メモつくっている. このあたりは運用次第.

しかし, 大体の場合はPCで作業しているときに浮かぶアイデアよりも, 外を歩いていたり家事をしていたり, トイレをしていたりするような, PCの前にいないときが多いので, 今はスマホのDiscordにその場でアイデアを打ち込んで, 忘れないうちに日記に格納する.

その後, 大事だなと思うものだけその場でPermanent Noteにメモを昇格させるが大抵の場合, ジャーナルメモにいったんお蔵入りする. Permanent Noteをそのつど作成していたらけっこう大変だし, そのアイデアはたまたまた浮かんだもののよいアイデアではないこともある.

アイデアをいったん寝かせることを, ツェッテルカステン界隈では俗にdistillという. 日本語訳で蒸留というが, あまりきかないかもしれない. じっくりろ過してエッセンスの濃度を高めるイメージ.

思考のメモを何度でも何度でもUpdateして洗練させていく

時間をおいてそれでも同じことがまた頭に浮かんだり, いろんなメモからの参照がふえたら, 日記のメモからPermanent Noteに抽出する. そして, ほかのPermanent NoteやReference Noteにリンクさせる. ここで凝りすぎてたくさんリンクを張ると時間が溶けるため, 数個でいい. 要はなんかメモが埋もれないようにすることが大事.

大事なことは, なんどでもなんどでもUpdateをかけること. 気になれば1日に何10個もメモをUpdateをすること. わたしはブログのような時系列に自分の文章を書き出すものよりもツェッテルカステンが優れていると思うのは, 過去の情報にアクセスしやすく, さらに修正変更も気軽にできるところだと思う.

そして, Permanent Noteというものがいつ人にみせてもいいように完璧に書きましょうという通説のアドバイスは実際のところよくないと思っていて, 雑でもいいのでまずは表現して, あとから10回でも 100回でも何度でもUpdateして磨き上げていくスタイルがいい.

そもそもPermanent Note作成時, それは永久保存という意味よりも, 一時的な仮説に過ぎない場合もあり, 時間を通じてそれを強固にしていくものかもしれない. たとえば「若い時の成長の価値は歳をとると味わいの価値のほうが重要になっていき絶対的な価値ではない」という, 成長についてのPermanent Noteは仮説であり, その思想を強固にするのは, 書籍を読んだときかもしれないしじぶんがおじいさんになったときかもしれない. そして, なんともこのふわっとしたタイトルに対して時間が経つとなんかいいたくなると修正を加えていく.

ソースコードをリファクタリングするようにメモをリファクタリングする

さらに, 追加したメモにリンクさせた先もついでに気づいたことがあればUpdateしたり, 思考の重複があれば共通要素を整理したりする. 変なはなし, 句読点やテニオハも気になったら直す. この作業について, 一見無駄なようでいて, そういうちょっとした修正でも, 手をフィジカルに動かしてちょっとずつ改善していくことは重要な気がするのだ. その作業で記憶が強化されたり, 作業を通じてアイデアが浮かんだりする.

メモが増えると, けっこう同じことを過去の自分が考えていて, たんにそれを忘れていることが多いことに気づく. だからこそ, 高速全文grep検索は大事. そして, 表記の揺れも気になれば全文検索からの一括置換だ. このあたりのノウハウはソースコード修正とあまり変わらない.

さらに, 重複箇所は関数を抽出するようにして, 思考に対するExtract Functionのリファクタリングをする. コードだと3箇所の重複でリファクタリングをするみたいなルールを定めることで, 過度のリファクタリングしすぎないことも大事だが, 思考の場合は2箇所の重複でやっていいと思う.

そしてその背後の価値観には, ああまたおんなじこと書いてる, これは前にも書いたよというちょっとしたイラダチがトリガーになることが多い.

わたしの価値判断APIアプリを設計開発する

知識をコンパイルしてアプリをつくる

知識をソースコードの比喩で考えた時, 以下の動画のアウトプットをコンパイルに喩える表現がとても面白い. 視覚的な構造として, 繋がりを見えるようにして, 共有できるフォーマットにコンパイルして外に出す. それによって価値が生まれる.

【知的生産のために】 #01 『アイデアを形にする』アイデア - YouTube

このコンパイルという表現は, けっこうC言語に関わってきたわたしにとってはしっくりくる. Makefileとは .cファイルを.aや.oというデータ形式に変換してそれをまるっとまとめてアプリを作成するためのビルド手順を自動化することだった. しかし, 構造がないとアプリをビルドすることもできなければ, そのアプリを他人に与えて価値を生み出すこともできない.

ツェッテルカステンにおけるPerrmanent Noteを元にStructure Noteによって構造を与え他人と共有できる形式でアウトプットする.

ただ, ここには理想と現実の厳しい壁があると思う. 実際のところバラバラのPermanent NoteたちをうまくStructure Noteに接合して自動コンパイル記事量産はできず, 参考にしつつアウトプット用にリライトすることが多い. または, このようなことは, けっこうビジネスの世界ではパワポで日常的に実行されているのかもしれない. パワポのスライドをいい感じに使いまわして会議資料を作成するなど.

ツェッテルカステンとは価値判断のAPIを提供するサービス

ツェッテルカステン界隈で, 概念のAPIともいうべき表現がある. あるメモをほかのメモの文中に引用できるようにように, タイトルはAPIのようにほかの概念からの使われ方を意識して書きましょうというもの.

なるほど面白そうだ, と思って実践しようとしたものの, これは結構難しい. うまくあるタイトルがほかの文中にハマる場合もあれば, うまくハマらないこともある. わたしのキャッチコピーセンスの問題かもしれないが, これは無理だと思った.

しかし, このあるメモにその概念を書き, それを他の概念との関わりを意識して記述するというアイデア自体は面白い. オブジェクト指向設計において, クラスとはプラトンのイデアのような抽象であり, それに属性と操作を定義する. もう少し計算機科学っぽく表現するならば, attributeの集合とfunctionの集合をペアにもつ抽象データ型.

APIで提供するものはなにか? それは自己の知恵である. それはWikipediaに載っているようなものでもChatGPTが出力するものでもなく, 自分の知恵, 言い換えると価値判断だ. そして, 自己とは, その価値判断の体系, 価値関数を提供する価値サービスといえる.

概念のAPIをクラス図やシーケンス図のようなUMLで表現できるか?

ツェッテルカステンシステムでやりたいことは, 概念のAPIをUMLで表現できるかということかもしれない. UMLとは, 統一モデリング言語といい, オブジェクト指向設計におけるデファクトスタンダードな設計書の書き方のきまり. けっこうむかし夢中になった思い出がある気がした4 オブジェクト指向自体が, 世界をソフトウェアの世界に抽象化することを目指し, それを記述ための言語がUMLならば, それは可能なのかもしれない.

どうも, Reference NoteにいろんなPermanent Noteが集まってくると, 属性と操作とその関係についての考察がたくさんたまってきて, 図にして考えたくもなる. 最近, 人生の攻略法という, 時間/人的資産/金融資産/社会的資産の関係図をみかけて, ツェッテルカステンに取り込むことはできないか考えた.

;; https://twitter.com/fladdict/status/774988305062506496

まずは時間を能力に変える. 次に時間と能力で影響力を獲得する. そして能力と影響力で時間をブーストしてお金を獲得する. 最後にお金を増やして時間を買う. その時間で能力と影響力をさらに強化する.

もちろん, 談志師匠のようにワンフレーズでズバリ言葉を定義できればいいのだが, 概念の理解はもっと複雑であり, それでもシンプルに表現するためには, 操作, 属性, 関係性を, クラス図, シーケンス図で表現するのがいいのかもしれないと考え始めた.

ただ, そうはいってもそれもやりはじめるときりがない, 気軽にいろんなテーマを考えたいので, 自分の実存に関わるような, 自由とか時間とかお金とかについての思想は深堀のためにUMLを導入してもいいのかもしれない.

知識を表現する手段としての最適なデータ形式はなにか? それはテキストなのか, ソフトウェア的なDSLなのか? それもまたハッキングでイノベーションを起こす対象に過ぎない. プレインテキストも疑う.

おわりに

ツェッテルカステンとは大学生のときヤフージオシティーズで運営していたHPのリバイバル

ツェッテルカステンに取り組み始めた時, それは大学生のときにヤフージオシティーズで, 素のHTMLとpタグとaタグでつくっていた「虚無との戦い」というサイトをリバイバルしようと思った.

https://kyomu-tatakai.netlify.app/main.html

その目的は, 自分はなぜ生きるのか, なんのために生きるのかがわからなくなり, それについて自分の言葉で表現しようとしたからだった. それはわたしだけではなく, 青年期の成長過程において, 沢山の人が経験するものだと思っている. そして, わたしは若干こじれたのか, 今のいままでずっと引きずっていた.

当時やっていたことと, わたしがツェッテルカステンで今やっていることは何も変わらない.

  1. 本を読んで読書メモをつくる.
  2. その本の内容をもとにテーマごとに他者の思想をまとめる.
  3. テーマごとに自分の思想をまとめる.
  4. その他なんかいろいろ日記とか雑記とか, うつ病闘病日記とか.

そして, またわかることは, ツェッテルカステンはアナログでも素のHTMLでもできるものであり, モダンなツールはあればベターだが, 大事なのはPermanent Noteとそのリンクだということ.

GTDでタスク管理をするようにツェッテルカステンで思考管理をする

そして, 当時のテーマは以下だ.

  • 人生の意味とは、人生の目的とは、生きがいとは
  • 笑いとは
  • 学問とは、勉強とは、教養とは
  • 幸せとは、幸福とは、快楽とは
  • 女とは
  • 思想とは、哲学とは、宗教とは
  • 青年期とは、青春とは
  • 成功(勝利)とは、どうすれば成功できるか
  • 仕事とは
  • 大学とは、学歴とは
  • 科学とは、技術とは
  • 人間とは
  • 真理とは・神とは
  • 数学とは
  • 愛とは、性欲とは
  • 自分とは、自我とは、意識とは、存在とは
  • 死とは、生とは
  • 時間とは

そして今考えていることとあまりかわらない. そしておそらく, これは死ぬまで変わらずにいろいろ考え続けるテーマになるだろう.

すると, 大事となってくるのは, このような人生という長い時間をかけて一貫して自分の思考を管理するためのシステムだ. わたしはWebサービスよりもプレインテキストがいいと考える一番の理由は, 大学生のときのメモがプレインテキストで残っていたため, 今でも参照してUpdateが可能という点だ.

逆に残念なのは, mixiやTwitterに書いたメモはちょっと復旧が難しい. 技術的には可能だが, めんどくさくもあり, 諦めている. Twitterの過去の全ツイートにgrepで5秒以内にアクセスできないことにブチギレている.

そして, 哲学テーマをつねに意識して生活することで, より日常生活のなかからそのテーマについての発見を得ることができ, そして素早くキャプチャーして管理することができる. これはGTDのようなタスク管理のように, 思考を管理することができる.

このような哲学テーマに関する自分の知識の軸となるようなものをつねにメンテナンスし続けることはとても大事なことのように思う. それは考えることだけではない, たとえばプログラミング言語を学ぶときにも, 知識の基礎概論の柱を立てて枝葉末節の知識をリンクしていく, それを継続的にメンテナンスしていくことでプログラミング言語の理解が深まることに似ている.

🖊知的生産のキラーアプリOrg-roamを1年使い倒し学ぶとはなにか考えたポエム(2022) | Futurismo

そして, それはたくさんの書籍が溢れていて, さらに書籍意外も動画や音声, さらに人との会話や実際の経験などなど, 多様な学びのチャネルがあるなかでそれをどうシステマチックにまとめ上げていくかは, 一番重要な気がするが, このノウハウが少ない気がするのは気のせいだろうか. やっている人はやっているのか?

本来の意味でのパターン・ランゲージによる個人Wikiを構築する

わたしがWikiについて改めて調べて驚いたことは, ウォード・カニンガムやケント・ベッグがはじめたWikiとはベストプラクティスをメモにして共有可能なものとして集めはじめたことで, Wikipediaみたいなものではなかったところだ. そして, Wikiの元祖はWikiのメモをみんなで共同編集するためのルールだった. タイトルは何文字以内で書きましょう!みたいな, これはコーディング規約だ. ここには, 言語化されていないものを言語化して, みんなで共有しようという意図がある.

🖊パターン、Zettelkasten、ACT - 時を超えた自己変革の規律 | Futurismo

ツェッテルカステンは個人的なものであり, 他者ではなく自己を重視することで, Wikiとも, また知識の集合体のような勉強メモみたいな個人Wikipediaとも違うものだが, この本来の言語化されてないものの気づきを自分の言葉でパターンを見出して言語化していくことはツェッテルカステンにとって重要.

とくに, 個人的体験による身体感覚や感性についての知識を重要視している. AIによって今まで以上に一般的な知識の価値は簡単に手に入るという点で下がる. AIに駆逐される人類にとって, ハッカー未来派マインドで考えるならば, 脱出だ. 国家から脱出してメタバースや海上や宇宙に活路を見出すように, 感性の世界に脱出する.

以前の記事で, 審美眼を鍛えてシュークリームを味わう知識の獲得を決意した. 審美眼を限定された時間やモノによる刺激から最大限の快楽を引き出す力と定義し, コンビニの150円のシュークリームの快楽を最大化するためにわたしは如何にして自分の知恵を駆使すればよいのだろうか?

🖊資本主義的幸福の神話の崩壊と超人について - coursera: The Scinece of Well-Beingの感想 | Futurismo

ひとつの手法として, シュークリームを味わうための個人的ベストプラクティスを言語化して, それをメモとして収集して, わたしさいきょうのシュークリーム味わいパターン体系を構築する.

日常生活の全包囲から知恵を獲得して構築していく

わたしはけっこうお金がないため, 書籍を数ヶ月に1冊しか買って読むことができない状態を生きている. 図書館にいけば読めることは読めるがめんどくさくもあり, こういう状況だとYoutubeから流れてくる断片的な音声情報と, ネットで検索する断片的な情報と, あと経験を通じては考えることによって自分で知識体系を構築していくことしかできないという, けっこう特殊な状況だかこそツェッテルカステンの技法はハマったのかもしれない.

わたしは最近はやりのフードデリバリーをしてお金を稼いでいるが, 駅前でハトを眺めている時間が長すぎる. この退屈な状況において, それでもわたしはこの瞬間でなにかを学ぶことができるかと考え, その気付きをツェッテルカステンに収める. 自転車を漕げば肉体も疲労する. その状況においてメンタルはどう変化するのか, 何か気づきはないか? 感じることをメモに変換することによって, 感性が情報として扱えるようになる.

知識の獲得というと, 書籍を読んだりするような学問的な意味合いが強いと思うし, それは積極的に情報発信をしている人がそういうことが好きな人たちかそれで収入を得ているばかりだからそう見えてしまうだけかもしれない. しかしここでいいたいことは, 日常生活からも学ぶことができるということだ.

大学3年生の冬に談志師匠のやかんをきいて思考停止をした

そして思い出深いのは, 大学1年生のころから3年間継続したこの虚無との戦いのサイトは, 大学3年生の冬に談志師匠のやかんをきき, いったんの休息を得た. とは, とはとずっといろんなテーマが頭の中をぐるぐるうごめく生活のなか, この落語は本当にわたしを救った. たんなるうつの反芻思考が止まっただけだが, 抗うつ剤よりも効果抜群だ.

とは? と問い続けることは, 結局なにかの理由がほしいからであるが, その理由はなんだっていい. なんかどこからで思考を止める定義をしよう, と. これは1つの人生を生きやすくするためのライフハック戦略かもしれない.

思考ストップとは, 言い換えれば価値観だ. 価値観のよいと思うことは, 不快すらも意義に変えることができる. ある行動に対して快と不快という対立がある. 快楽はそのまま受け入れよう, 不快は価値感を適用することで意義に変えよう. すると, 快楽も意義も両方がプラスしか残らないという認知のマジカルハックが起こる. こういう, 前提を疑い認知によって世界の見方がかわることをもとめているのかもしれない.

また, 最近はこのアプローチとは別に, マインドフルネス的に思考を受け流すことも熱心に行なっている. これの嬉しいことは, これはスキルでありやればやるほどに受け流しが上達する. これもライフハック的戦略.

そもそも, とはが, 単なる反芻思考ループに陥った時, なぜ生きるんだ?というループに陥った時, 過去に同じことを考えていたメモによってループをメタ認知できる. これは, 反芻思考をテクノロジーでハックした例だ. メンタルヘルス的な認知療法ツールの可能性すらある.

わたしは2つの武器を手に入れた.

とはを考え続ける行為が好き

思考停止にしろマインドフルネスにしろ, それを考え続けることによってほかのことに支障が出るから控えようとするが, そもそも本能的に, とは?という疑問について考えることが好きなのかもしれない.

考えつづけること自体を否定してはいけない. むしろテクノロジーによって思考やメタ認知はどう加速させることができるのか? というテーマに取り組み続けることはワクワクすることだ.

ツェッテルカステンを通じて, 思考をハックしよう. それはわたしらしい.

虚無との戦いの終戦を宣言をする

前回の記事で自己について分析し, 今回の記事で世界についての分析をした.

🖊ツェッテルカステンで自己分析してみた - アイデンティティクライシスを経験している青年へ | Futurismo

自己については価値観を定義した. 世界についてはその適切な管理方法を考えた. これは終わることがないだろう. とはを問い続けることで世界を把握することは不可能かもしれないが, 管理方法を決めることで, 安心感を得た. 結局, とはを問い続けることは, 人間は不安定に耐えられないからであり, 管理方法は安定をもたらす. 同じことは, 自己アイデンティティにもいえる. いろいろ考えた結果, 雑なツェッテルカステンの大量のメモが残り, ああこの雑なメモが自己の正体だと思うと, 安心感を得た.

そして, もう若くなくどちらかというとだんだん老いを感じて人生の下り坂を感じ始め, 美しい老害に向けて思考ストップという珠玉の宝石を集めていきたいと考えている. いつまでも考えることもいいけど, 1つずつ終わらせていくことも大事だ.

とりあえずこの虚無との戦いをついにこの記事によって終戦させる. 虚無との戦いを終わらせることは, 人生の夢のひとつだった. わたしは青年のときに描いた夢をひとつをここに叶えたのだった.


  1. 世間はやかん - 立川談志(2010) ↩︎

  2. https://practical-scheme.net/trans/beating-the-averages-j.html ↩︎

  3. 【やかん】 立川談志 - YouTube ↩︎

  4. UMTP L2 に合格 | Futurismo ↩︎