はじめに: 自分の血糖値を知りたい

健康オタクの次なるターゲットは血糖値だ. Fitbitで睡眠や心拍を追跡してきたが、血糖値はまた別の世界がある.

CGM(Continuous Glucose Monitor、持続血糖モニタリング)というデバイスをご存知だろうか. 上腕の裏側にセンサーを刺して、5分間隔で24時間血糖値を計測し続けてくれる. 糖尿病患者向けの医療機器だが、海外では健康な人がバイオハッキング目的で使うのが流行っている.

わたしはDexcom G7というCGMセンサーを10日間装着して、自分の血糖値を追跡してみた. その1週間分のデータを分析した結果を報告する.

使用デバイスと分析環境

  • デバイス: Dexcom G7
  • 分析期間: 2026-02-15 ~ 2026-02-23(約7.7日間)
  • データポイント: 2216件(5分間隔)
  • 分析ツール: Python(pandas, matplotlib)

Dexcom G7は上腕裏側に装着する小さなセンサーで、スマホアプリとBluetooth接続して5分ごとに血糖値を記録してくれる. センサーの有効期限は10日間. データはDexcom ClarityからCSVエクスポートして取得した. 1 FreeStyle リブレ2が有名だが、Dexcom g7それより少し安い.

また、アプリがわたしの所持している2つの中華製スマホともに対応機種ではないことが購入してから発覚してあせった. 結局タンスの奥にしまわれていた、バッテリーがないので充電しないと3分で電源が切れるスマホにアプリをインストールして常時充電して計測した. いちおう数時間はセンサーとアプリの接続が途絶えても問題なくデータは記録される. 対応機種は事前にチェックしたほうがいい2.

全体の血糖コントロール

基本統計

1週間の血糖値データから、主要な指標を算出した.

指標 評価
平均血糖値 115.0 mg/dL 正常範囲
標準偏差 (SD) 13.1 mg/dL 変動が小さい
変動係数 (CV) 11.4% 安定(推奨<36%)
最小値 90 mg/dL 低血糖なし
最大値 184 mg/dL 食後スパイク
GMI 6.06% 正常範囲
推定HbA1c 5.63% 正常範囲

変動係数(CV)11.4%というのは、推奨閾値36%の約1/3で、血糖変動が極めて安定していることを示す. 低血糖エピソードもゼロだった.

TIR(Time in Range)

CGMの世界では、TIR(Time in Range)という指標が重要だ. 血糖値が目標範囲(70-140 mg/dL)に収まっている時間の割合を示す.

範囲 閾値 割合
非常に低い <54 mg/dL 0.0%
低い 54-69 mg/dL 0.0%
目標 70-140 mg/dL 94.0%
高い 141-180 mg/dL 5.9%
非常に高い >180 mg/dL 0.1%

国際コンセンサスではTIR 70%以上が推奨されているが、94.0%と大きく上回った. 高血糖帯(>140 mg/dL)は全体の5.9%で、主に食後スパイクと推測される.

可視化で見る血糖値の全体像

血糖値時系列

全期間の血糖値推移. ティール帯が目標範囲(70-140 mg/dL)、金色の縦線が食事イベント、紫の縦線が活動イベントを示す. 食後に一時的にスパイクしても、すぐに目標範囲に戻っているのがわかる.

AGP日内プロファイル

全日を24時間軸にオーバーレイしたAGP(Ambulatory Glucose Profile). 赤線が中央値、濃い帯が25-75パーセンタイル、薄い帯が10-90パーセンタイル. 食事のタイミングで山ができて、睡眠中は安定しているパターンが見える.

血糖値ヒートマップ

X軸が時刻、Y軸が日付、色が血糖値を表すヒートマップ. 赤が高く、緑が低い. 日を追うごとに全体的に緑(安定)が増えているのが視覚的にわかる.

TIR日別グラフ

日ごとのTIRの積み上げ棒グラフ. 白破線がTIR 70%推奨ライン. 後半はほぼ全日が目標範囲内に収まっている.

血糖値分布

血糖値の分布ヒストグラム. 範囲別に色分けされている. 大部分が目標範囲内に集中しているのがわかる.

日別トレンド: 週を通じた改善

日別データを見ると、明確な改善傾向があった.

日付 平均 起床時血糖 TIR(%) SD CV(%)
02-15 127.4 - 61.4 20.2 15.8
02-16 123.0 119 88.5 13.7 11.1
02-17 122.2 - 92.0 12.8 10.5
02-18 119.1 109 91.3 12.1 10.2
02-19 114.3 107 93.4 13.9 12.2
02-20 111.2 107 99.0 9.5 8.5
02-21 110.1 106 97.2 10.1 9.1
02-22 107.4 106 98.3 9.0 8.3
02-23 107.5 101 100.0 6.2 5.8

前半(2/15-18)は平均119-127 mg/dL、TIR 61-92%だったのが、後半(2/19-23)は平均107-114 mg/dL、TIR 93-100%まで改善した. 標準偏差も20.2から6.2へと1/3以下に縮小している.

2/15はセンサー装着初日(夕方開始、n=44)なので参考値だが、それを差し引いても明らかな改善傾向がある. CGMでリアルタイムに血糖値を見ながら食事や活動を調整した効果が出ているのだと思う.

Fitbitデータの活用

dexcom g7のデータとFitbitの活動ログを組み合わせてみる.

起床時刻と血糖値(空腹時血糖)

Fitbitの睡眠データと組み合わせた起床時血糖の計測ができる. Fitbitが記録した起床時刻(endTime)に対応するCGM読み取り値を起床時血糖として算出した(起床時刻±15分以内の最近接データポイントを使用).

日付 起床時刻 起床時血糖 日平均
02/16 06:09 119 mg/dL 123.0
02/18 06:06 109 mg/dL 119.1
02/19 05:58 107 mg/dL 114.3
02/20 06:03 107 mg/dL 111.2
02/21 06:29 106 mg/dL 110.1
02/22 05:37 106 mg/dL 107.4
02/23 06:30 101 mg/dL 107.5

起床時血糖の平均は107.9 mg/dL(範囲: 101-119 mg/dL)で、日平均より一貫して7 mg/dL程度低かった. 一晩の絶食でベースラインに戻っている形だ.

空腹時血糖の一般的な基準は正常値<100 mg/dL、正常高値100-125 mg/dLとされている. CGMは間質液を測定するため静脈血検査と10-15 mg/dL程度の差があるが、後半の101-107 mg/dLは正常範囲に入っている.

運動と血糖値

Fitbitのアクティビティログ(activity_logs)とCGMデータを突合して、運動前後30分の血糖変化を分析した.

種別 n 平均HR 運動前 運動後30m 平均変化
Bike 2 117 111.8 121.1 +9.3
Outdoor Bike 10 106 106.6 115.4 +8.8
Walk 5 85 117.7 117.0 -0.7
Weights 1 110 122.8 106.0 -16.8

直感に反するが、自転車(有酸素運動)は血糖を一時的に*上げる*(+8〜9 mg/dL). これは運動時のアドレナリン・コルチゾール分泌による肝臓からの糖放出(運動誘発性高血糖)として知られる現象だ. 特に早朝の自転車通勤で顕著だった.

一方、ウォーキングはほぼ中立(-0.7 mg/dL). 低強度のため肝グリコーゲン放出と筋肉での糖取り込みがバランスしていると考えられる. ウェイトトレーニングは-16.8 mg/dLと顕著な低下を示した(n=1だが、筋トレによるGLUT4活性化と整合的).

心拍数で高強度(HR>=102)と低強度に分けると、高強度群は平均+10.2 mg/dL上昇、低強度群はほぼ変化なし(-0.6 mg/dL)だった. 運動強度が高いほどカテコールアミン放出が増え、一時的な血糖上昇が大きくなる.

食後の歩行と血糖値

Fitbitの1分間隔歩数データ(steps_intraday)を活用して、日常的な身体活動と血糖の関係を調べた.

各CGM読み取りの直前30分間の歩数で分類すると、完全に静止(0歩)のときの血糖は115.8 mg/dL、軽い歩行(1-200歩)では111.3 mg/dLと、*少し動くだけで約4.5 mg/dL低い*ことがわかった.

手動記録された食事イベント3件について、食後の歩行と血糖回復の関係を見ると面白いパターンがあった.

日時 炭水化物 食後60分歩数 スパイク 120分後
02/15 21:17 50g 297歩 +30 食前+37
02/16 13:14 10g 0歩 +5 食前+14
02/18 19:30 40g 1,605歩 +55 食前+3

02/18は炭水化物40gでスパイク+55 mg/dLと最大だったが、食後に1,605歩歩いた結果、120分後には食前+3 mg/dLまで回復している. 02/15は食後ほぼ静止で、120分後も食前+37 mg/dLと高止まりだった. n=3なので断定はできないが、*食後の歩行はスパイクそのものを防ぐのではなく、スパイクからの回復を早める*可能性が示唆される.

考察/気づき

食後にコーヒー飲んだら血糖値ダブルスパイク

2/18日の2段階のスパイクについて。原因は父親とあってステーキランチ(ライスあり)を食べたあとに30分散歩して、そのあとカフェでコーヒーを飲んだとき.

ベストプラクティスにしたがって食後に歩いており、その間はちょっと下降したものの、カフェでコーヒーを飲んで急上昇したことに驚いた. ステーキで160->散歩で100->コーヒーで再び140のスパイクコンボ炸裂!

食後のカフェインは血糖値を上げる、これは事実らしい. 食後のコーヒーは当たり前にみんな実践していることでは?ビックリした. 砂糖はいれてないがミルクはいれた. 父親との会話も不機嫌になったのは血糖値のせいならばしかたがない. わたしのせいではない.

完全無欠コーヒーやナッツはほぼ血糖値を上げない

健康的なことに対する関心が最近高まったので、むかしハマったバターコーヒーを久しぶりに実践してみた3. グラスフェッドバターの代わりにギーをつかったが、驚くことに完全無欠ギーコーヒーを飲んでも血糖値は無風だ. さらにミックスナッツを食べても、ほぼ上がらない. すばらしい.

脂質は高価という点でなかなか手が出せないでいたんだが、データが分かると日常に取り入れたくなる. よい脂質を取り入れる習慣を取り入れて、糖質よりも脂質からカロリーを摂取したいと思った.

課題は食費なので、それは外食とかコンビニコーヒーを止めることで捻出すればよりいっそうよい.

うつな気分が血糖値が問題だったら切ない

血糖値の乱れは心の乱れ

よく巷できくことは当たっているし、よりいっそう実感できた. 今回は、血糖スパイクと主観的気分やブレインフォグ、眠気の感覚も観察していた. 血糖スパイクの時間帯や強度と、おもしろいように連動した感覚がある.

うつの治療に認知を変える認知療法はいいかもしれないが、もっと生理レベルの問題のほうが根本的な気がした. 血糖値、睡眠不足、そして慢性炎症による疲労感. 長年悩んでいる憂鬱な気分がこういう生理レベルの問題だと、とても切ない. 4

運動前に意識して糖質をいれる

私にとって、糖質よりも脂質を入れたいとおもうのは、心の乱れ問題がとても大きい. かといってケトジェニックダイエットのような極端な糖質制限は健康に悪影響があるかもしれないので勇気がない. ゆる糖質制限のロカボダイエットあたりがいいと思った5.

糖質をまったくとらないというのも難しい. 脂質はいいが、問題は食費が糖質よりもかかる. なので、わたしの節約食生活では糖質である程度カロリーもまかなう必要もある.

運動はそこまで劇的に効果があるわけではないものの、それでも10分散歩でスパイクを防げることも学んだ. 運動は血糖値を下げるならば、運動前が糖質摂取のチャンスタイムとしてそのタイミングで糖質をいれたい. 食後の散歩もできなくて糖質しか食べられない無防備な状況はなるべく避けたい.

自転車ロングライドと血糖値コントロール

2/20、この人は昼と夜に2時間くらいずつ25キロの自転車をこいた. 途中糖質を入れつつ走った. 糖質をいれると20ml/dLくらいスパイクするがすぐに失速する. 理想的な血糖値スパイク. ただ、いつもならば無防備で糖質をいれると160まで上がるが140に止まる小さなスパイクであることはおもしろい.

自転車ロングライドだと、高血糖よりもむしろ低血糖を防ぐためにこまめにライド中に糖分補給をすることが推奨される. 糖質一回投入でだいたい1時間みたいな感覚はわかった. もっとデータがとりたいのが惜しいところ.

糖尿病予備軍かもしれない

CGMをつけてわかったことは、わたしは糖尿病予備軍かもしれないということ. これについてClaude Codeに質問しまくった.

一番の原因は、夜ご飯を食べてすぐに寝てしまうことだろう. これによってインスリンの効きが悪いまま、さらに消化したままノンレム睡眠という、あまり睡眠の質かよくないことが原因. 実際に睡眠中も血糖値がトラッキングできて、カレーを食べた日は最悪だった. 野菜スープはよい.

分析するには日数が足りないがそれでも1度は投資するべき

Fitbitデータと組み合わせるとなにかおもしろいことがわかるかと、上記以外にも心拍数や栄養素管理、睡眠時の分析など、いろいろ試したのだがあまりおもしろいインサイトはえられなかった(妥当な結果)ので記事にはしなかった. あまりおもしろい分析はできなかった.

そもそもだが、7日というサンプル数がとても少ない. イベントとその反応のようなケーススタディをいつくか学んでいるうちに使用日数がきてしまった。

もちろん、血糖スパイクと歩数の効果とか、食事の順番とか、夜の食事内容と睡眠の影響とか、個々のケースはおもしろい気づきはある. それにしても日数がもっと欲しいとおもう一方で、使いつづけるのはコストが高い.

一方で、Dexcom g7を試したことはとても満足している. 2年くらい試してみたいと悩んでいたが、結局知識として血糖値と活動の関係を知っていても、リアルタイムにデータを確認したほうが圧倒的に学習や驚きがある.

そういう意味では、健康な人ですら1度はつかってみるべき. 糖尿疾患がなければ継続使用はコストが高い.

注: 本記事は個人的な実験と分析に基づくものであり、医学的アドバイスではありません. 体調に不安がある場合は、医療機関を受診してください.


  1. データ取得方法: Dexcom Clarityアプリ(clarity.dexcom.com)からCSVエクスポート機能でダウンロードした. Clarity経由で過去90日分のデータをEGV(Estimated Glucose Value)形式でエクスポートできる. ↩︎

  2. Dexcom G7対応のスマートフォンおよびスマートウォッチ | Dexcom, なんのためのContinuousセンサーだよと若干キレて血糖値が上昇した. ↩︎

  3. 完全無欠ダイエットを開始します | Futurismo, 2017年の記事. 9年前. ↩︎

  4. うつ病、完全に理解した | Futurismo, よりいっそう、完全に理解した. ↩︎

  5. ロカボオフィシャルサイト, 山田悟さんの提唱しているダイエット. ↩︎