✅はじめに: SECOND BRAINの書籍の感想を書きます

海外で話題の「セカンドブレイン」の書籍がついに日本語訳されて出版されたようです(23/03/24). さっそく読んでみましたので感想を書きます!!

SECOND BRAIN(セカンドブレイン), 時間に追われない「知的生産術」- ティアゴ・フォーテ

といいつつ, この記事では, GTDとツェッテルカステンとセカンドブレインなどのライフハックムーブメントの系譜上にあるセカンドブレインについていろいろ考えたことを書いて行こうと思う.

セカンドブレインとはだったり, 個別のPARAメソッドやCODEメソッドなどはChatGPTにでもきいたほうがいい. もしくはティアゴ・フォーテさんのYoutubeやブログは情報源として大変充実している. DeepLにでもぶちこもう.

ChatGPTが答えないようなものを書いていく, という意味でここからはわたしの拡大妄想解釈だ.

🎓セカンドブレインとは

セカンドブレインとは, 書籍の定義を引用すると, 記憶, アイデア, 知識のデジタルな倉庫 となっている.

ざっくり噛み砕くと, これはメモ術であり, メモをデジタルで管理するための方法論. メモ術というと, そこからタスク管理のトピックだったり, 勉強術だったり, 読書術だったり… といろんな派生トピックに飛ぶ. そしてそれらを扱う知的生産術, ぼくのかんがえた最強のXというのはライフハック界隈にいくらでもある. この手の主題は名前を何度でも繰り返しているように思う. じゃあ, セカンドブレインとはなんであるかというと,

2020年あたりからモダンイケイケなITデジタルツールを駆使した海外でブームのメモ術

現代のムーブメントというところがなかなか魅力的であり, この書籍に感化されていろんな人が個別に情報発信をしているという様もなかなかおもしろい. だからこそ, この書籍が日本語訳されたということで, 日本におけるデジタル知的生産術のゲートが開かれたというような見方をしている.

セカンドブレインとはWiki/ツェッテルカステン/日誌/タスク管理/目標管理のなんでもござれの世界

セカンドブレインとはメモとその管理方法なので, メモに落とせるものならば全部が範疇にある.

ここがけっこうやっかいなところかもしれない. なぜならネットの情報発信者は前提として勉強メモを言っているのか, タスク管理なのか, 目標管理なのか, 日記なのか, アイデア管理なのか…

とりわけわたしが混乱したのは, ツェッテルカステン及びスマートノート及びセカンドブレイン…

ツェッテルカステンとは自分の理解であれば, 自分の思想のみをメモに残して管理するものであり, 私と私の世界との関係を言葉で定義するのがツェッテルだと思っていた1. しかし海外の情報を集めていると勉強のためデジタルノート術や読書メモとして話題になっている. そしてその火付けアプリとなったのがおそらくRoam ResearchとNotion. そこからObsidianだっりLogseqだったり, そしてそれらと接続するためのいろんなWebサービスだったり…(お腹いっぱい).

この勉強ノートと思考管理の違和感の原因が今回ついにわかったかもしれない. それはセカンドブレインにおけるプログレッシブ・サマライゼーションとして紹介されているものかもしれない(後述).

セカンドブレインとはEvernoteをどう使うかのフレームワーク

セカンドブレイン, 第二の脳というと, Evernoteをまず思い浮かべるのではないだろうか?情報を自分の脳ではなく外部ストレージに集めようというコンセプト. この第二の脳というキーワードはライフログのブームとともに現れた気がしている. ChatGPTにきくと, デビッド・アレンさんが提唱したといっていたが若干あやしい.

私の解釈では, あのたぐいのメモ管理システムを実際にどう使いこなすのかと迷う人が多くその一つの解を示していると思う.

ティアゴ・フォーテさんがGoogle Talkで話していた動画をみつけたら, デジタルツールとしてEvernoteを使っていた.

Tiago Forte | Building a Second Brain | Talks at Google - YouTube

セカンドブレインとはGTDのデジタル・リローデッドだ!

おそらく書籍を読んでライフハックのトレンドを追っている人は, あれこれってGTDとかなり似ているのでは?と思うかもしれない2. 実際, 書籍の後ろのほうなんてパクリ疑惑がわたしの心の中に湧いたほどだ.

調べてみるとYoutubeでティアゴ・フォーテさんとGTDのゴッドファーザーであるデビッド・アレンさんの対談動画が見つかった.

In Conversation with David Allen: Interview with Tiago Forte - YouTube

このティアゴ・フォーテさんというのは元々コンサルタント会社で働いていた人のようであり, 世代的にGTDブームのまっただ中であり, GTDのやり方を自分なりに最近のデジタルツールと合わせてプロディースしたように見える. PARAメソッドやらCODEやらも, それらはGTDに似ているし, もっと言えばデビッド・アレンさんも過去の何らかのフレームワークに影響を受けて独自にプロディースしているだけかもしれない.

わたしがこれはエモい展開だ!と思うのは, かつて10年以上前に米ライフハッカーのブログが立ち上がり, GTDブームが来て, ライフハックやライフログの波が押し寄せてきて, いろんな情報が盛んに行われた… その延長にフォージさんがいるようであり, わたしにはデビッド・アレンさんのようなライフハック界の次世代スターに見えた.

セカンドブレインとはツェッテルカステンのデジタル・リローデッドだ!

そもそもわたしがティアゴ・フォーテさんの存在を知ったのは, 2年前にツェッテルカステンのことを調べていたときであった. たまたま, How to take smart notesのことを調べていたら, フォーテさんとアーレンスさんの対談動画を発見した. その頃の自分のメモでは「なんだこいつ, 情報商材屋か?」ということを残していた… (今も若干胡散臭い).

Interview and Q&A with Sönke Ahrens on How to Take Smart Notes - YouTube

そして, このセカンドブレインは, ツェッテルカステンをデジタルツールによってモダンイケイケにしたものだ. このようなムーブメントはツェッテルカステンを現代に紹介した書籍, How to take smart notes!という書籍からスマートノートともよばれたりする. 日本語訳された書籍の読書メモはこちらを参照.

日本語のツェッテルカステン解説本(TAKE NOTES!)を読んで考えたこと | Futurismo

🆎GTDとセカンドブレイン

GTDとセカンドブレインについての感想.

セカンドブレインはGTDのReferenceをUpdateした

GTDをはじめたときによくわからなかったのは, GTDには参考情報の具体的な管理方法があまり示唆されてないので, 独自の方法で試行錯誤していた. 具体的には, その答えはEvernoteにあるのではないか?ということでEvernoteの情報を調べたり, もはやEvernoteの中でGTDをしていた.

だんだんGTDを運用していると, 参考情報(Reference)やいつかやることリスト(Someday)が膨大に膨れ上がっていき, メンテしないとさらによくわからなくなり, 結局GTDそのものもをやめてしまうようなことが何度もあった. タスク管理をうまくやってGetting Things Doneしたかっただけなのに, タスク管理自体が大変になってしまうというジレンマ!

この時間の文脈とは切り離された情報, 切り離されたゆえに膨大に溜まっていくタスク, これをうまくやるための方法論がSecond Brainと解釈した. 最近のデジタルツールを駆使したGTD Reference Updateだ.

そしてGTDとセカンドブレインの違いについて, フォーテさんが語る動画をみつけて同じようなことをいっていた. GTDはActionableなものを管理するが, Second BrainはTimeless, 時間とは切り離されたものを管理する.

Building a Second Brain vs. Getting Things Done - YouTube

セカンドブレインのキャプチャーはGTDにとても似ている

セカンドブレインにでてくるCapture, GTDのCapture/Organizeだ.

  • 頭に浮かんだ最高の考えを保存し, あとから探す手間を省く.
  • 雑用は「セカンドブレイン」に任せ, “仕事のスイッチ"を切ってリラックスする.

ref. GTD(Getting Things Done): ステップ・バイ・ステップガイド

セカンドブレインとはGTDに影響を受けつつデジタルの強みで強化したものと見える.

  • アイデアを結びつけ, 分野の垣根を越えたパターンに気づくことで人に真似できない解決法を導き出す.
  • 過去に覚えたことや考えたことを秒速で見つける.

Getting Things Done + Personal Knowledge Management - Forte Labs

GTDは心の不安を集めるがセカンドブレインではワクワクを集めてクリエイティブを目指す

GTDの文脈では気になることというネガティブな不安だった. GTDの最も大事なことはなにか?というと,

Mind Like Water(水のような心)

だとわたしは確信している. そしてこれこそがGTDが私を魅了する一番のキモだと思っている. そしてタスク管理はそのための手段であり, 最悪どうでもいい. わたしは最近はガチでGTDをすることを放棄しているし, どちらかというとタスク管理しまくるくらいならばその時間で瞑想したほうがいいと思っている.


セカンドブレインにおいてCaptureで最終的に集めるものは, 心を揺さぶるもの, と書籍には書いてある. 良い表現だ. セカンドブレインで集めるものはポジティブだ. そしてこれこそGTDと本質的に異なるセカンドブレインのキモかもしれない.

GTDとは不安をあつめてマインドフルネスを目指した. セカンドブレインはワクワクを集めてクリエイティブを目指す. それはプレイフルネス, 遊び心のようなものがあるのかもしれない. 知識のおもちゃ箱のようなイメージがある. もしくは自分だけのワクワク図書館.

🆎ツェッテルカステンとセカンドブレイン

GTDとセカンドブレインについての感想.

プログレッシブ・サマライゼーションはZettelkastenのLiterature Notesの具体的な方法を示した

この書籍を読んでスッキリしたのは, ツェッテルカステン界隈ではやっている Distill という単語の元ネタがこの書籍だったこと. この単語は蒸留や抽出という意味だがイマイチ日本語として存在しない. これが, ディスティル(抽出)という単語で訳されていた.

具体的には, プログレッシブ・サマライゼーションいうような方法で語られていた. モダンなアプリを介して情報をキャプチャー, ハイライトして, Literature Notesしてツェッテルカステンシステムに格納するような. Roam系ツールの勉強メモがどうもツェッテルカステンとは違う違和感の裏にはプログレッシブサマライゼーションがあった.

ツェッテルカステンのLiterature Notesのとり方にはルーマンやズングアーレンスさんの方法と, モダンなデジタルノートによる方法で2つの派閥があるような印象をもっていた.

かつて, ツェッテルカステンを調べつつその延長で見つけたデジタルメモ術はとてもジャンキーな魅力があった3.

セカンドブレインはライフハック的なテックムーブメントがある

ツェッテルカステンは人文学に偏りすぎていた印象がある. そもそもニコラス・ルーマンが社会学者だった.

一方, セカンドブレインはライフハック的なテックムーブメントがある. それはスマートノートという言葉かもしれない.

GTDが初期にIT界隈のギークのなかでバズった結果アナログでやっていた本人にすら想定していないようなムーブメントに成長していったような, その延長線上にある.

💭おわりに: ライフハックポエム

最後に, ライフハックから俯瞰したポエム.

ライフハックの系譜にあるセカンドブレインとこれからの第二の脳が気になる

セカンドブレインとは, 今までのライフハックのトピックの見え方の違いであり, あんなフレームワークやこんなフレームワークの切り取り方の一つだけれども, 今のデジタルツールと結びつき過去の流行を踏まえて今のトレンドであり, 今後はまた違うものが見え方を変えてプロディースされるだろう. という意味でライフハックのトピックの一つに過ぎない.

セカンドブレインの書籍を読んだからといってわたしがこれをやるかというと, わたしはGTDで満足しているので新しくはやり方を変えない, 本質的には似ている. そしてわたしはGTDが好きだから.

ただ, 今まさに新しいデジタルな方法を探していたり, ライフハック界隈に新しく興味を持っている人にとっては, このデジタルツールを駆使したムーブメントは巻き込まれると最高にワクワクするだろう. わたしがかつてGTDに魅了されたように.


そしてわたしは, このあとのライフハックの流れにも興味がある. おそらく, まずChatGPTのようなチャットAIの影響はもうすぐにライフハック界隈にも波がくる気がする. たとえばこの第二の脳からAIで検索や整理を補助するものなど. わたしは深く調べてないけど, たぶんそういうサービスはすでにあるはず4.

また, 最近若干下火な印象をうけるが, ライフログだったりQuantified Seflのようなテキストではない自分のデータを分析するムーブメントがきてほしいと思っていて, 来ないならば自分で勝手に向かっていきたい. ウェアラブルデバイスやおうちハックによって自分に関する定量データを収集分析.

GTDやツェッテルカステンが銀の弾丸でなかったようにセカンドブレインも銀の弾丸ではない

書籍にはセカンドブレインに取り組むメリットとしていろいろなキャッチコピーがある.

  • 時間に追われない!
  • 究極なまでに効率的!
  • アイデアがどんどん湧く!
  • アウトプットはかどりまくり!

かつて, GTDを極めればストレスフリーの境地に到れるような悟りにあこがれていた. しかし, そんな境地はいつになってもこないように, セカンドブレインによってなんか頭がよくなるわけでない気がしている.

過度に期待しないほうがいい. GTDがストレスフリーの銀の弾丸でなかったようにセカンドブレインも銀の弾丸ではない. しかし, 銀の弾丸かどうかはツールではなく自分しだいとも言える.

第二の脳がワーキングメモリだとしたら筆記開示にも生産性を上げる手段はある

GTDやセカンドブレインのCaptureが筆記開示だったりジャーナリング, 書く瞑想の派生と捉えるとどうなるだろうか? たしかにそれはストレスを減らす効果がある.

しかし, ワーキングメモリのようなものとして捉えるならば, ストレスフリーに至る別の集団もある. それは筋トレだったり散歩だったり, 瞑想だったり, お笑いだったり. おすすめは冷水シャワーに突っ込むこと. 水のような心ではない, ストレスフリーのヘンタイ術とは水に突っ込む心.

そもそもGTDやツェッテルカステンに生産性が必要なのか問題

GTDやツェッテルカステンが生産性の文脈で語られることにはどうでもよくなってきたし, それを最近は重要視してない. マインドフルネスとプレイフルネスを重視して収集性や好奇心を優先する. たとえそれが非効率でも時間があふぉみたいに溶けてもオーセンティシティ的に価値があればいい. 生産性が強調されるのは資本主義が生産性の尺度で測る流行があり, それを狙ったマーケティングかもしれない. 効率的に勉強したい人たちにウケがいいから. しかし, もっと別の角度に魅力はある気がしている5.

私の魅了されるGTDのキモは水のような心, 心理的柔軟性. ツェッテルカステンのキモは思考のおもちゃ箱, 史上最強の知的生産基盤. どうも生産性からは縁遠い.

だいだいGTDやRoam系ツールのデジタルツールにハマればハマるほどに時間が溶けていき, はたしてそれが生産的だったのか疑問に思っている人は多いのではないか? これをわたしはツールの罠と呼んでいる. それでもそれが好きなのは, 生産性以外のなにかが好きなのだ. それはメモや手帳に対する普通ならざる異常なこだわりだったり. わたしだったら, 図書館が好きなのとツェッテルカステンが好きなのには共通点があり, それは個室ビデオ店も同じだ.

もはやそれは才能だ. このようなライフハックにはまる人には, ニューロダイバーシティ的にどのような性格特性があるのかということは興味深い. GTDにしろ, ツェッテルカステンにしろ, そしてセカンドブレインしろ. それがなぜこんなにもワクワクするのかを深堀すると, より深く自分を知ることができる. そしてその理由は人それぞれ違う.

ライフをハックするとは? そもそも, ハックとは? Emacsのゴッドファーザー, リチャード・ストールマンはいった6.

ハッキングとは遊び心のある知性を楽しむこと - リチャード・ストールマン

セカンドブレインには生産性よりも遊び心が似合う.


  1. 最近みつけた, 哲学者ジシェクの動画がツェッテルカステンをよく示している. 椅子に座り続けることが無理な人のための執筆論を語るジジェク(日本語字幕) - YouTube. 「アイデアは相対的には練り上げられた形でメモしておく. ある程度は文章になっている思考の流れのようなものだ. 素材は全て揃っている, あとは並べ替えるだけだ. メモをつくり, 編集する. 執筆は消え失せる. 」 ↩︎

  2. このインタビュー動画だと, 「自分が2022のデビッド・アレンだと思いますか?」というストレートすぎる質問をぶつけていたw https://youtu.be/RN_RtgmQ8SM ↩︎

  3. Shu Omiさんの動画と記事を熟読していた. How to Build the Ultimate Note-Taking System — Idea Storage and Idea Factory | by Shu Omi | Shu Omi’s Blog | Medium ↩︎

  4. このあたりの日本語情報はサンミンさんのnote記事が素晴らしい. https://note.com/sangmin/ ↩︎

  5. 🖊資本主義的幸福の神話の崩壊と超人について - coursera: The Scinece of Well-Beingの感想 | Futurismo ↩︎

  6. https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001208 ↩︎