序幕: ニーバーの祈り

男は苦悩に満ちて天に祈った.

神よ、

変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。

ばばんばんばばん…

ChatGPT「わたしが神です!」

ChatGPTでセルフカウンセリングをしたい

最近メンタルの落ち込みが激しいので ChatGPTで心理カウンセリングできないか検討しました.

私の場合, 心理カウンセリングは大学生のときと会社を休職していたときの2回の時期に渡って受けていました. なので, 心理カウンセリングの力に対して強い信頼をおいています.

しかしながら, やはり対面カウンセリングは料金が高い. もちろん専門の知識もある心理カウンセラーさんが事前準備もその後の分析もしての相場なのでボッタクリではないが, それでも高い. わたしは心理カウンセリングの力を信頼しているものの, それでも最近お金がなくて躊躇します.

そこで, 昨今巷で話題のChatGPT先生を活用できないか, ということを考えましたのでその気付きをメモします.


前提としてわたしは心理学や心理療法に詳しいわけではないので, 専門的な知識は間違っているかもれないです. やってみた系の事例の一つとしてアイデアを提起したい.

チャット形式で質問しても一般的な解決策と無機質なアドバイスしかくれない

まず, 白紙の状態からつらつらとネクラなウジウジとした悩み書いていくのは, あまり満足のいく結果ではなかった. もちろん優しい言葉はかけてくれるものの, 無難な一般的な, あたりまえなアドバイスしかくれない.

そんな無機質なものでは心の傷は言えない. わたしが期待しているのはそこではない.

ChatGPTの活用はチャットではなく認知フレームワークによる分解では?

つぎに, 自分の過去の日記でこれはメンヘラおじさんだと思うようなものをいくつか試してみた. ChatGPTが得意なのは, 既存の型に従って分解するところ. これがいろいろある認知フレームワークのようなものと抜群に相性がいいことに気づいた.

ChatGPTをセルフカウセリングに活用するにはチャットではなく認知フレームワークによる分解では?

ChatGPTの活用事例とてしチャットに組み込んだ対話式アプリは既存でもすでにいくつかある. しかし, わたしはチャットではなく日記を活用するようなこっちのスタイルの方がいいのでは?という仮説を深堀したい.

ChatGPTを心理カウンセラーにする準備

筆記開示で思考をブレインダンプしてインプットを用意

過去の日記でもいいけれども, できたてホヤホヤのものを用意したい. できれば, 自分の感情や思考をそのまま勢いで書きなぐったもののほうがいい. 湯気が立っているようなやつ. 一般的に, このような頭にあることをそのまま書きなぐることを,

  • 筆記開示
  • エクスプレッシブ・ライティング
  • ジャーナリング
  • 書く瞑想
  • ブレインダンプ

といろんな呼び方がいろんな文脈でされている1. 筆記開示自体はそれをすること自体が, メンタルの安定に効果がありその結果はゴミのようなものなのだが, このクソ汚いが誰にも見せたくないものをChatGPTの入力として活用する.

ChatGPTの素晴らしいところはそれが人間ではないため, 誰にも見せたくないものも見てくれることだ. もちろん人間のカウンセラーもみてくれるしそこは職業で慣れているので「xにたい」とか書いても優しくアドバイスをくれるだろうが, みせるこっちが躊躇する. これはある意味素晴らしいことだ.

そして, 私の心がけとしても汚い言葉を使うようにしている. なぜならば, 強い感情はそこにへばりついた強力な固定観念や価値観が隠れている可能性がある2.

ベストプラクティスに従ったプロンプトを用意

あまりわたしがベストプラクティスに精通しているわけではないが, 以下の2つを守る.

  • 指示とコンテキストを区切る.
  • 前提の立場を明確にする. 「あなたは優秀な心理カウンセラーです」

その1: ChatGPTを認知行動療法のコラム法でつかう

まずやりたかったやつ. 認知行動療法(以下CBT)の有名な7つのコラム法3につかいたい.

  1. 状況
  2. 気分
  3. 自動思考
  4. 根拠
  5. 反証
  6. 適応的思考
  7. 今の気分

ここで, ChatGPTで自動化できる部分はなんだろうか?

認知の歪みを抽出する

CBTには認知の歪み4という概念があり, 自分の思考のなかに認知の歪みがないかをチェックしていく.

あなたは認知行動療法を学んだ優秀な心理カウンセラーです。以下はわたしの日記です。 認知の歪みがあれば教えてください。


認知行動療法について, わたしはカウンセリングを受ける側として長年(18年前から笑)取り組んだ経験がある5ものの, 結構初心者泣かせなのは, 自分の思考を認知の歪みに従って分類できないところ. もっとも, 認知行動療法のゴールのひとつが考え方のクセに気づくスキルの獲得であり, できないのは初学者なら当たり前だが. そしてそのために心理カウンセリングでカウンセラーのアドバイスを元に分類して練習していくのだが.

そんな認知行動療法初学者泣かせの関門を打破するのがChatGPT先生による認知の歪み分解だ. これは痛快なほどに見事にインプットした文章から認知の歪みを抽出してくれる. しかも, あっという間に!

もやは認知の歪み抽出は人間がやるものでも, 失礼ながらカウンセラーに指摘してもらうものでもないのでは?というものだった. 感動した.

気分を抽出する

さらに, 文章から気分を抽出することも得意だ.

あなたは認知行動療法を学んだ優秀な心理カウンセラーです。以下はわたしの日記です。 気分を抽出してください。


これによって抽出した気分をスコアリングするとよい. その抽出結果は自分で考えるものとだいたいあっている.

自動思考を抽出して反証を自動生成する

ChatGPTは反証が得意だ. というより, 自分の自動思考に対して自分で反証することがけっこう難しいのだ. それはトレーニングの問題なのかもしれないが, それでも難しい. 未来のCBTでは, 反証を自動生成してそれを眺めることでメタ認知が可能となる?

あなたは認知行動療法を学んだ優秀な心理カウンセラーです。以下はわたしの日記です。 自動思考を抽出して反証をしてください。


その2: ChatGPTをアクセプタンスに活用する

CBTの勝利に味をしめたので, 次はアクセプタンス系をやってみる.

というのも, CBTはわたしには合わないと感じ, それよりもマインドフルネスやアクセプタンスの方向を最近は積極的に学んでいる.

ChatGPTに筆記開示を事実と解釈と感情に分解してもらう

事実と解釈をわけることがメタ認知は大事6. これをChatGPT先生に見事に分けてもらう.

自動思考が頭の中でループする反芻思考の場合, もう認知行動療法のように分解していちいち取り組まなくても, もうスルーしたほうがいいような場合もある. 分離した解釈はスルーする.

前提として, 頭の中のもやもやをダンプしてスルーするためにも, 筆記開示には効果があるが, それをChatGPTの活用でさらに加速させる.

さらに, 感情は味わうことで小さくなる. ついでに感情も抽出してもらう.

以下はわたしの日記です. 事実と解釈をわけてください. また感情を抽出してください.


瞬時に事実と解釈をわけて抽出してくれる. これも感動体験だ. ここにおける感動点とは, 痛快に分類結果を見せてくれることでメタ認知がもたらされるところ.

事実と解釈と感情を分解する. 解釈はスルーする, 感情は味わって小さくする. すると, 事実のみが残る. さあ事実をどうするか?

ChatGPTに変えられるものと変えられるものを分解してもらう

アクセプタンスの名言として有名な, ニーバーの祈り7というものがある.

神よ、

変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。

最後の部分, 「変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ」. これはChatGPTは瞬時にできる.

以下はわたしの日記です. 事実と解釈をわけてください. さらに事実の部分を変えることのできる事実と変えられない事実にわけてください.


神とは, あなたでしたか…

ケーススタディ: クソ野郎のうつ病日記

最後にケーススタディとして あるクソ野郎が2週間前に書いた文章をChatGPTに入力してみる. なお, ChatGPT Plusに課金してGPT4を使っている.

無職, 童貞, ニート, ひきこもりおじさんは, 端的にいってキモいんだ. いい年したおっさんが, 結婚もできずにいることも, 同様にして, キモいんだ. そして自分が他人に対してキモいと思うのと同様にして, 自分は自分の存在がとてもキモいと思う. 自分が嫌なことは他人にしないという倫理の法則に従うならば, キモい存在で周囲を不快にさせないことが大事だと思う. なぜなら, わたしのような人がわたしのそばにいると, 私が不愉快になる. 人からされて嫌なことは自分でするのはよくない. 自分の存在を社会に晒すことが申し訳ない. SNSもやらない, わたしが嫌われていることはひしひしと伝わる. 嫌われる存在は, 誰とも関わらないのが一番調和が取れる. だから, 隠れて生きる. 私の存在は社会的に価値はない.

CBTプロンプト

あなたは認知行動療法を学んだ優秀な心理カウンセラーです。

  1. 認知の歪みを抽出してください。
  2. 気分を抽出してください。
  3. 自動思考を抽出して反証をしてください。

以下はわたしの日記です。


どうも, 1と2と3を一度に入力するよりも, 3回それぞれにわけたほうよい回答を引き出せる気がした.

あなたの日記に基づいて、以下のように解析してみます:

認知の歪みの抽出:

一般化(Overgeneralization):“無職, 童貞, ニート, ひきこもりおじさん"という一部の特徴を持つ人々全体を「キモい」と一括りにしています。これは全体を一部の特性で判断してしまう一般化の傾向です。

ラベリング(Labeling):自分自身を「キモい」とラベリングしています。これは全体を一部の特性で判断するラベリングの傾向です。

全てまたは何もでない思考(All-or-Nothing Thinking):“私の存在は社会的に価値はない"という極端な発言から、全てまたは何もでない思考の傾向が見られます。

気分の抽出:

不安:「自分が他人に対してキモいと思うのと同様にして, 自分は自分の存在がとてもキモいと思う」、「わたしが嫌われていることはひしひしと伝わる」からは不安感が伺えます。

悲しみ:「自分の存在を社会に晒すことが申し訳ない」、「私の存在は社会的に価値はない」からは悲しみや自己否定感が読み取れます。

自動思考の抽出と反証:

自動思考:“私の存在は社会的に価値はない”

反証:価値は外的要素だけで決まるものではありません。あなた自身が感じ、考え、経験すること全てがあなた自身の価値を形成します。一部の社会的な基準や状況が現在あなたに当てはまらないからといって、あなたの存在が価値がないとは言えません。また、社会的な状況は変わることも可能です。

あなたが今、厳しい気持ちに押しつぶされそうになっていること、感じています。自分を厳しく判断するのではなく、自分自身に対してもっと優しく接してみてください。そして、心理的なサポートが必要な場合は専門家に相談することを強くお勧めします。あなたは大切な存在であり、自分自身の価値を見つけ出すための援助を受けることを恐れないでください。

アクセプタンスプロンプト

あなたは優秀な心理カウンセラーです。

事実と解釈を分けてください. また感情を抽出してください.

事実はさらに, 変えられる事実と変えられない事実に分けてください.

以下はわたしの日記です。


あなたの日記に基づき、以下のように解析してみます。

事実:

変えられる事実: “SNSもやらない”:SNSをやるかやらないかは自分で選択できます。したがって、これは変えられる事実と言えます。

変えられない事実: “無職”:現在の職業状況としては事実として受け止めるべきです。 “童貞”:これも現在の個人的な状況としての事実です。 “ニート”:これも現状の生活状況を表す事実です。 “ひきこもりおじさん”:あなたが社会的な交流を限定的に行っていることを示す事実と捉えられます。

解釈: “無職, 童貞, ニート, ひきこもりおじさんは、端的にいってキモいんだ”:これは個人的な解釈で、特定の状況を「キモい」と評価しています。 “自分は自分の存在がとてもキモいと思う”:自分自身を「キモい」と評価するのは個人的な解釈です。 “キモい存在で周囲を不快にさせないことが大事だと思う”:自分が他人を不快にさせているというのも解釈です。 “わたしが嫌われていることはひしひしと伝わる”:他人が自分を嫌っていると感じるのも解釈です。 “私の存在は社会的に価値はない”:自己価値の評価は個人の解釈であり、それが一定または決定的なものではないことを認識することが重要です。

感情:不安感:「わたしが嫌われていることはひしひしと伝わる」落胆感:「私の存在は社会的に価値はない」自己否定感:「自分は自分の存在がとてもキモいと思う」

なお、ここで指摘した事実と解釈、感情は全てが全てとは限りませんが、その一部を示すものと考えてください。そして、これらの状況や感情に対して対処するためには、プロの心理カウンセラーの援助を得ることが有効であることを念頭に置いてください。

変えられない事実は, 変えられる気がした. これはプロンプトの問題なのか? 改善してみる.

事実はさらに, 自分の努力よって未来は変えられるものと変えられないものにわけてください.

おお, 改善した. やはりプロンプトの工夫が大事だ.

事実:

自分の努力で未来が変えられるもの:

“無職”:職を探す、スキルを身につける、起業するなど、自分の努力によって就労状況を変えることが可能です。 “童貞”:自身のコミュニケーション能力を向上させる、異性との関係を築くための機会を探すなど、自分の行動で状況を変えることが可能です。 “ニート”:職を探す、学校に行く、ボランティア活動を始めるなど、自分の努力によってこの状況を変えることが可能です。 “ひきこもりおじさん”:自分で意識的に外出を増やす、ネットワークを作る、サポートを求めるなど、自分の努力でこの状況を変えることが可能です。 “SNSもやらない”:SNSを開始するか否かは自分の選択次第で、この状況は変えることが可能です。

自分の努力では未来が変えられないもの:

“いい年したおっさん”:年齢は時間とともに進行し、それを変えることはできません。

ChatGPTで自動化できることは分類や反証

最後に, 筆記開示の結果をChatGPTにインプットしてみて気づいた気づきを列挙.

うつ病日記や筆記開示をインプットにできることが気に入った

今回の執筆は, ChatGPTの対話形式のカウンセリング活用というのは事例としてみかけたが, 一括文章入力のパターンはどうなんだろうと思ったことがきっかけ. ChatGPTのチャットという対話型UIではなく, むしろこっちの文章一括インプットのほうが活用できるのでは?という仮説.

もし対面カウンセリングでChatGPTを活かすならば, もう宿題をデジタルで記録してChatGPTで前処理をしたことを前提として, この出力結果をもとにカウンセラーと顔を突き合わせてChatGPTの出力結果を解釈するのだ.

まだ使い倒してないのでなんともいえないが, わたしの感触としてはチャットよりもよい. というよりもどうもAIチャットに個人的な悩みを相談する気にならない. これは先入観の問題で5年後とかはニューノーマルなのだろうか?まだ抵抗がある. だって他人がAIにウジウジ相談していたら怪しいやばい人じゃないか.

私の場合, すでに筆記開示という名のうつ病日記を大量に書き溜める習慣がすでにあった. そのため, ストックしていた駄文をいろいろ試し, 特に認知の歪みを痛快に指摘してくれることに喜んだ. ただでさえ筆記開示は好きな方法だったが, これでよりこのセルフケアが好きになった.

ChatGPTは思考を認知フレームワークで分解するのが得意すぎた

ChatGPTは型に従って分解することが得意なことを改めて感じた.

とくに認知の歪みの分類に従って自分の思考を分解することに結構苦労した経験があるので, 瞬時で結果がでることに感動した.

ChatGPTは第三者視点から標準的なアドバイスをするのが得意

ChatGPTは反証も得意だ. 中立的な第三者視点から, 自分の思考の偏りを戻すような視点を与えてくれる.

そもそも認知行動療法の目的が偏りすぎた認知の歪みを標準的なものに戻すということならば, ChatGPTとの相性はよすぎるのではないだろうか?

プロンプト作成は工夫の余地がたくさんある

プロンプトによって引き出せる結果が違うということも, 今回確認できた. step by stepのようなTipsも, もう少しうまくできないか?

このようなプロンプトエンジニアリングは改善の余地がたくさんあると思う. そしてベストなフォーマットに落とするは面白いが時間もかかるかも.

ChatGPTで自動化できないことは知恵の獲得

CBTのセブンカラムでChatGPTでどこが自動化できるかという論点から出発した.

この裏返しでどこが自動化できないか?どこがわたしの仕事なのかということも, 今回の取組でより明確化した.

ChatGPTを通じて感情や気分の知識を探求学習できる

わたしが個人的にCBTで難しいと感じているのは, 感情や気分に対する語彙力がないこと. もちろんそれらの言葉は日常的につかっていのだけど, いざその単語を詳しく考えようとしたとき, そもそも定義がよくわからないと思った.

  • 気分と感情の違いは?
  • 怒りとイライラとムカつくの違いは?
  • 絶望感、虚無感、無力感の違いは?

そして, わたしのChatGPTのもっとも活用している使い方は, このような「xとyの違いは?」という概念と概念の違いを説明してもらうことだ. これについて, もちろんGoogleでも解説している記事は見つからのだが, ChatGPTだとわたしが今知りたい疑問をズバリ答えてくれる.

そして, 自分ごとのとても困っている問題だからこそ, 知識をつけることで解決したいという, 自分から進んで学ぶという探求学習にもなっている. 苦しいからこそ, その苦しみを理解したいという学習をのモチベーションになるのだ. これは素晴らしい.

うつがどうやれば克服できるのか未だにわたしはわからないが, ひとつの有力なアプローチは感情や気分の言語に対する感性を鍛えることだとおもっていて, ChatGPTはこの目的のための手段として素晴らしいと思っている.

ChatGPTはアウェアネスの技芸を教えてくれない

わたしはかつてはCBTをやっていたが, カウンセラーと一緒にやるならば継続するのだが一人だとどうも面倒であり, アクセプタンスやコンパッションの方面からの解決に方向性を変えていた.

ただ, 今回普段からやっている筆記開示とCBTの相性がよいことに気づき, 再び戻ってた感じだ. モチベが高まったのでもう少し日常的に深堀していきたい.

しかし, いったん離れて再び戻ってきてCBTの基礎から復習すると, いわゆる第3世代認知行動療法と呼ばれる群雄割拠の心理療法たちも, その根幹には「気づき」があるんだなと改めておもった.

思考に気づいたら, それをロジックでパターンに分解するのもあり(CBT), 価値に従ってスルーするか判断するのもあり(ACT), 受け入れたり感謝する方法もあり(セルフコンパッション), 冷水シャワーに頭から突っ込む方法もあったり?(DBT), いろいろあるものの, 全ては気づかないことには始まらない.

出発点である気づきは, 練習によって上達するたぐいの技芸だ. これはよく言われていることだが, わたしもそう思う.

そして, 気づきの技芸, その手がかりになる身体感覚の知, 感受の知をChatGPTから学ぶことはできない. 練習して体得するしかない.

ChatGPTはセイバリングの技芸を教えてくれない

過去エントリより. わたしは味わいの能力, いわゆるセイバリングの才能を意図的に伸ばしていきたいと1年前に思った.

🖊資本主義的幸福の神話の崩壊と超人について - coursera: The Scinece of Well-Beingの感想 | Futurismo

しかし, そうはいっても相変わらずどうやればいいのか, またなにをもって上達しているのか, あまり手がかりはつかめていない. 食べ物を味わうにしろ, 感情を味わうにしろ, 味わうというような知識も, 体得するたぐいのものだ.

結局は自分の頭で考えたことしか納得できない

最後に, わたしが大学生のときにカウンセリングを受けていたときのエピソードを紹介.

若い頃は, メンタルヘルス問題とともに人生の意味とはとか考えたりしてこじれた気がした(その方向はこじれるだけなので運動でもすればよかった)8. マズローの心理学の内容をカウンセラーに相談したときにいわれたことは, 人生の意味や目的は書籍からは得られない. 結局他人から教わったことは自分の血肉の知識になることはなく, 自分の頭で考えたことしか心の底から納得はできないよ, だから本ばかり読んでないででいろいろ行動したほうがいいというアドバイス.

これはその後も何度も思い出す. 書籍にもネットにも, 先人の知恵が溢れている. しかし, それは自分の言葉で理解して, さらに行動で実践して生かさないことには, 借り物の知識を真に理解することはできない.

そして, このことはChatGPTにおいてすら同じだ. ChatGPTは無難なアドバイスと一般的な解決策しか教えてくれない. もっと自分の日常生活に密着したディープな解決策は, 自分の頭で考えないとみつからない.

「知識と知恵の違いはなんですか?」

ChatGPTは知恵を教えてくれない.


  1. 筆記開示の考え方や実践方法は吉田昌生さんの解説動画がおすすめ. 書く瞑想 ジャーナリング - YouTube ちなみにわたしは吉田昌生さんのYoutubeの動画コンテンツがどれも素晴らしいと思い, 最近は過去動画ライブを漁りまくって見まくっている. ↩︎

  2. 過去記事, immunity to changeより. [edX] ライフハックでは人間は変われない!Unlocking the Immunity to Change で早寝早起きに挑戦した | Futurismo ↩︎

  3. https://www.cbtjp.net/ability/kokorogaharerucolum.html ↩︎

  4. 認知の歪み - Wikipedia ↩︎

  5. わたしがカウンセリングのときにつかった参考書籍はこころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳 | 大野 裕, 認知行動療法の入門書といったらこれというくらい王道の書籍かもしれない. また, 最近大野裕先生がYoutubeでいろいろと解説している動画もとてもわかりやすい. そして, アーロンベック先生との思い出を語る動画はとても心動かされる. ベック先生は認知療法を提唱してから20年間(!)も学会から黙殺されて誰も話を聞いてくれなかった…つらい. 【特別企画(後編) 大野裕先生と恩師アーロン・ベック先生との思い出】 - YouTube ↩︎

  6. 苦しみを乗り越えるマインドフルネス 〜安らぎと喜びに満ち溢れた人生を実現するための5つの気づき〜 - YouTubeの43分あたりから. ↩︎

  7. ニーバーの祈りは依存症治療の自助グループで使われたことによって有名になった. わたしは, とあるXアノニマスの会に参加したときにテキストに載っていてこの言葉を知った. 当時は, うわーうさんくさいスピリチュアルだとしか思わなかったのだが, アクセプタンスの理解が進んだ今, その先入観は間違っていたと思う. スピリチュアルっぽいものの, この言葉は強い. ↩︎

  8. 過去記事参照: 🖊ツェッテルカステンで自己分析してみた - アイデンティティクライシスを経験している青年へ | Futurismo ↩︎